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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第68話 おかわり 
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動き回っている赤毛の美少女が、課業開始時間のかなり前に会議室へ出頭し、それから数えるほどしか部屋を出ることなく、深夜日付が変わるギリギリのところで疲れた顔をして女性用兵員室に戻ってくるのを見れば、怪しむのは当然だ。

 そして課業時間の殆どを司令部会議室で過ごしているのが、若い作戦参謀の少佐殿とくれば話の方向はおのずと二つに集約されるはずのだが……

「同室の女性兵長から、セクハラ・パワハラには黙っていてはダメよ、と言われました」
 拘束三日目。疲れているはずなのに、まったく辛くなさそうな、不思議な表情でブライトウェル嬢は、無精髭の生えている俺に言った。
「給糧室の運用長も、司令部通信オペレーターの准尉殿も、何か少佐に対して勘違いされているみたいで……」
「あぁ……悪いね……」

 そうだろうなぁと、俺は右手を右目に伏し当てて溜息をついた。噂で憲兵が飛んでくるような事態ではないとは思うが、エル=ファシル星系における空間戦闘の大部分がすでに終了し、偽装工作の演習すら終わって話題も乏しく、乗組員の緊張感がほぐれているというのだろうか。それ自体が悪い話ではないのだが、噂の中心になるようなのは勘弁してほしい。

 それに戦場の恋とかそういう方向ならともかく、どうにも俺がブライトウェル嬢に『パワハラかます悪役』という形で纏まっているらしい。艦内の女性将兵につらく当たったことなどないどころか接点すら乏しいのにそうなるのは、恐らくはエレキシュガル星系における事前演習で、虎の威を借りる狐よろしく傍若無人に振舞ったのが遠因だろう。まぁ現実はそんな生易しいものではない。

 アスターテ星域内の各星系の詳細、ドーリア星域管区司令部が収集している情報、ダゴン星域における被害状況、それにエル=ファシル星域の支配圏確認。ケリム星域でドールトン准尉と一緒に仕事をした時に比べて、仕事量は単純に四倍。補佐役というべきブライトウェル嬢はあくまで軍属の従卒であって、参謀教育どころか軍人としての教育も殆ど受けていない。

 初日は彼女に資料の取り出し方や三次元投影装置の使い方を仕込み、つたないながらも一通り使いこなせるようにしてからは、ひたすらそれを使っての資料集積と俺の口頭指示による文書作成を行わせている。確かに見る者によってはパワハラそのものだ。だが、ブライトウェル嬢は不満どころか嬉々としてこの作業に従事している。

 もしかしたら彼女が俺に好意を持って尽くしてくれているということだろうが、それは些か思い上がりも甚だしい。どうでもいいが面倒な空気の中、だいたいの構想がまとまった三日目の夕刻。温めた戦闘糧食を持ってきたブライトウェル嬢が、唐突に俺に告げた。

「この作戦が終了し戦死することがなければ、自分は正式に軍人になろうと思っています」

 アントニ
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