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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第68話 おかわり 
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もあるでしょう。司令官閣下、巡航艦小戦隊を複数、アスターテ星域へ向けて偵察哨戒に出すことを具申いたします」
 マグカップにあった残りの珈琲を一気飲みして、モンティージャ中佐が言った。

「掃討作戦の補給計画については万全を期しますが、アスターテ星域への戦闘哨戒については、補給物資の到着を待ってからの行動となります。当部隊だけでなく、他の独立部隊も絡みますので、まず早急に作戦規模をご検討いただきたい」
 まだ残っている珈琲入りミルクを混ぜながら、爺様に視線を向けてカステル中佐は言った。

「ジュニア。儂は現在の作戦進行状況を鑑み、貴官の連絡将校任務は終了したと判断する」
 そして三人の参謀達からの視線を集めた爺様の視線は、俺に向けられている。

「エル=ファシル星系の索敵哨戒・掃討作戦の立案指揮はモンシャルマンに任せ、貴官はアスターテ星域における戦闘哨戒作戦の大筋を纏めておくように。期日は……カステル中佐どうじゃ?」
「一週間。到着する物資のリストは、早急に報告させます」
「というわけだ。ジュニア。とり越し苦労になるやもしれんが、各部隊幕僚・参謀を集めた合同参謀会議の前までに立案せよ。まず素案を四日でやれ」
「承知いたしました」

 異議のある命令ではない。実戦指揮官でない参謀の役割とは、指揮官の判断リソースを増やす為、無駄になろうとも順序立てて考えて考えて考え抜くことにある。

「よし。では各々仕事をしようかの」

 そう言うと、爺様は腰を上げる。俺達はそれより早くそれぞれの席から立ち上がり敬礼すると、爺様はゆっくりと答礼した。年齢を思わせぬ背筋のピシッとした爺様の答礼に、一〇年後のチェン少将に支えられた爺様の丸い背中を思い起さずにはいられなかった。

 そして参謀全員が会議室を出る時、再び席に着いた爺様のそばに、ブライトウェル嬢が立っていたのが周辺視野の片隅に入った。その時は各自の容器の片づけだろうと思っていたのだが……

「申告します。ビュコック司令官閣下より、ファイフェル中尉に代わってボロディン少佐のお手伝いをするよう、拝命いたしました」

 十数分後、職務用として司令部用会議室を使って構わないという命令と共に、ブライトウェル嬢が踵を高く鳴らし、寸分の隙もない敬礼を俺に見せるのだった。





 頭を抱える余裕があるわけではないが、極めて不本意な雑音と言うのは音量が小さくても耳に入りやすい。老練で先の戦いでも味方を完勝に導いた自分達の司令部が、若い未成年の女性軍属を会議室で長時間拘束監禁しているという噂は、俺が自分の個室と司令部用会議室の往復の間の僅かな歩行時間ですら聞こえてくる。

 誰が流したというわけでもない。普段なら司令部艦橋、司令官個室、給糧室、通信室、情報分析室などを忙しく
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