アスターテ星域会戦B
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ムーアは何も言わず、ただ拳を握っているだけだった。
「提督、いかがいたしますか?」
「報告、敵艦隊より入電『貴艦隊にもはや勝機無し、降伏せよ』以上です」
「降伏だと…」
「はい」
通信士官からの報告を聞いたムーアの顔が見る見るうちにどす黒くなっていく。
「閣下、如何なさいますか?」
「いや、俺は無能者であっても、卑怯者にはなれん!」
ムーアは怒りに震えながら叫ぶ。
「こうなれば玉砕あるのみ、死して武人の魂を敵に見せつけてくれるわ!!」
「な、閣下!!」
ムーアの言葉にラップが非難の声を上げるが一喝により黙らされてしまった。
「敵艦隊、降伏勧告への応答なし」
「そうか、では沈めよ」
「はっ!」
「全艦砲撃開始!!」
その瞬間、帝国艦隊旗艦ブリュンヒルトを始めとした各艦の主砲が発砲する。
「敵旗艦発砲!!直撃コース、来ます!!」
第6艦隊旗艦ペルガモン艦橋でオペレーターの悲鳴にも似た声が上がる。
「回避だぁ!!急げぇえ!!」
ペルガモン艦長ラットゥアーダ中佐は絶叫に近い声で叫んだ。
「駄目です!間に合いません!!」
「うおおぉお!!」
次の瞬間、旗艦ペルガモンに帝国戦艦の放ったビームが直撃した。
ペルガモンは一瞬にして艦内が爆炎に包まれる。
「ぐ、うぅ…」
数少ない艦橋内の生存者であったラップ中佐は薄れゆく意識の中、自分の命が消えるのを感じていた。彼は力尽きる前に胸ポケットから写真を取り出す。それは愛する婚約者であるジェシカ・エドワーズとヤン、クロパチェク、自身の4人を校門をバックに映したものだった。
「すまないジェシカ、君との約束を守ることができなかった……。俺はもうすぐ死ぬだろう、だがどうか許して欲しい…」
「グフゥ、ゲハッ、それとヤン、クロパチェク、ジェシカのことは頼んだぞ…。最後に…俺みたいになるなよ…」
ラップの瞳からは涙が流れ落ちる。次の瞬間第6艦隊旗艦ペルガモンは大爆発を起こし消滅した。そして、帝国艦隊は第6艦隊が壊滅したのを確認するとそのまま戦場を去っていったのだった。
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