第二十六章 夢でないのなら
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、二人はお互いの肩に手を置いて、しばらく見つめ合っていた。
夢ではないんだ。と、お互いの存在がじわじわ確固たる確信に変わっても、なおしばらくの間。
一生こうしているわけにもいかない。とでも思ったか、カズミは急に首をきょろきょろ、周囲を見回し始める。
そして、ぼそり疑問の言葉を呟いた。
口調はさらり、しかしその疑問は、アサキを飛び上がるくらいびっくりさせるものだった。
「ところでさあ、ここ、どこなんだよ」
「えーーーーっ! カズミちゃん、知っているんじゃないの?」
分かっていて、わたし(とは思わなかったにせよ)を助けにきてくれたんじゃなかったの?
「知らねえよ。そのドロドロヴァイスタの件で意識が飛んでさ、気付いたら、見たこともねえ狭い部屋の床に、寝っ転がってたんだもん。こんな格好でさ」
薄桃色のシャツに、デニムのミニスカートという、遊び着で。
ボロボロに破れ焦げた、青い魔道着を着ていたはずなのに。
「扉の前に立ったら、勝手に開いたから通路に出て、うろうろうろうろ、誰もいなくてさ。途方に暮れていたら、突然なんか気配を感じて、それがお前だったんだよ」
「そうなんだ。……誰がこんなところへ、わたしたちを運んできたんだろうね」
アサキも不思議そうに、きょろきょろ通路を見回した。
一体、なんであろうか。
ここは。
空想科学の未来鉄道を思わせる、巨大なチューブがうねっているといった感じの、奇抜な形状の通路。
これまでの、たかだか十数年の人生で、学校、マンション、商業ビル、ありきたりな通路しか歩いたことがないが、差し引いても充分に、現代常識から外れるデザインであろう。
電球の類は、どこにも見当たらない。
壁は真っ白に見えるけれど、実は光っている?
それとも、もしかしたらここも実は真っ暗で、また魔力の目で認識しているだけ?
海外の映画に登場しそうな、遠い遠い未来の、建物のようだ。
または、宇宙船の中?
それか、海底基地とか。
「あの戦いのあとに、周辺が、もしかしたら日本とか世界全部が、吹き飛んだとか。ここは天国か、はたまた地獄か。それともあたしら二人、氷漬けにでもなったまま時間が流れて、遥か未来にきちまったんかな。この壁をブチ抜いたら裏に仕掛け人とかスタッフがいるドッキリだったら笑うけど」
どこまでを、本心としていっているのだろうか。冗談として、いっているのだろうか。
いずれにせよ、アサキは全然聞いていなかったが。
カズミのその言葉の、最初の部分が引っ掛かってて。
あとの言葉は、まったく聞いていなかった。
あの戦いの、あと……
あの……戦い……
そこで、わたしは……
ふ、っとため息を吐いた。
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