第二十六章 夢でないのなら
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に会えたんだ。あたしは開けるぞおおお!」
また、カズミのような別人のような女子の、乱暴な声。
ついに、人に会えた、って?
どういう、こと?
と、いまはそんな時じゃない。
「分かった。タイミング合わせて開けよう」
「おう。せーのっせーでっ」
二人の力により、扉が、動き始めると一気に加速が付いて、一気に全開した。
「いって! 人差し指ちょっと巻き込まれたっ!」
少女は、慌てて指を引き抜いた。
薄桃色のシャツに、デニムスカート姿。
茶色い髪の毛を、ポニーテールにした、少女。
アサキと見つめ合い、
「ああ……」
お互い、唖然としてしまっていた。
ぽかんと、口を開けたまま。
アサキの目の前に姿を見せた、向こう側から扉をガンガン殴っていた、言葉遣いのやたら乱暴な少女は、まさかというべきか、やはりというべきか、
「カズミ……ちゃん」
「アサキ……」
ここは生者の世界か。
死者の世界か。
アサキは、ごくり唾を飲み込んだ。
3
「お、お前、本当に、アサキ、なのか? あの……アホで有名な」
カズミは、まだ狐につままれた顔で、ぷるぷる震える人差し指を、そーっとアサキへと向けた。
気恥ずかしいのか、言葉はやたらふざけているが。
アサキもやはり狐につままれた顔で、すぐには言葉を返せず、ぽけっと口を半開きにしていた。
やがて、ふうっと小さく柔らかいため息を吐くと、苦笑を浮かべつつ顔を上げた。
「気を悪くしないでね、カズミちゃん。わたしも、同じこと思ったんだ」
「誰がアホで有名だあ!」
がちっ!
カズミは、赤毛の少女の首を両手で思い切り掴んだ。
「ち、違うよお! 本当にカズミちゃんなの、って思ったってこと! ぐ、ぐるじい離しでよお」
「お、お、なんか久々だな、このやりとり。うん、この締め心地具合のよさは、まさしくアサキだよ」
はははっ、首をぐいぐい締めながら、カズミは楽しげに笑った。
「ぞでより首い締めるのやめでえええ……」
やめてもらえるのは、それから何十秒後のことであったか。
なおもしばらく、土気色の顔で、げほごほとむせているアサキであったが、やがてそれもおさまると、
「でも、不思議だったな。この気配は絶対にカズミちゃんだ、って思ったのに、指が触れた瞬間に、あれカズミちゃんじゃない、って感じてしまって」
「はあ? こんな絶世の美女は、そうそう存在しねえのに、ブレるんじゃねえよ」
「やっぱりカズミちゃんだっ」
アサキは、ぷっと吹き出した。
いいぐさに、なんだかおかしさが込み上げてしまって。
「おい、別に笑う台詞じゃなかっただろ!」
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