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魔法使い×あさき☆彡
第二十六章 夢でないのなら
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部屋の中を。

 この部屋もこの部屋で、なんなのだろうか。
 扉らしき物が、まるで見当たらない。
 どこから入ったんだ、わたしは。

 宇宙の広さは有限というが、その宇宙がこの空間分しか存在しないかのようにも思えて、ちょっと怖くなってきた。

 早く出てしまおう、こんな部屋。
 出入り口がないはずはない。

 不安げな表情のまま、ベッドから腰を持ち上げる。
 ゆっくり、歩き出す。

 妙に身体が重い。
 自分の身体じゃないみたいだ。
 もしかして、相当に長いこと、眠っていたのではないだろうか。

 そんなことばかり、いってもいられない。

 ふらつく足取りで身体を運び、短い距離というのに、ようやく壁に辿り着き、触れた。
 触れてみると、奇妙なのは見た目だけでなく、感触もであった。

 煮詰めた砂糖を乾燥させたかのような、ざりざり感のある手触り。

 こんな奇怪な場所に自分の存在することに違和感を覚え、そっと戻した手で、今度は自分の頬に触れてみた。

 触れた手をゆっくり下ろして、静かに、胸を押さえる。
 膨らみ始めたばかりの、まだまだ多分に幼さの残る、でも女性らしくやわらかな胸。
 感じる、鼓動。

 夢じゃない。
 現実、これは現実なんだ。

 わたしは……(りよう)(どう)()(さき)

 ズクッ。
 突然、頭蓋骨を内部から叩き割られた。
 そんな激しい頭痛に襲われて、うぐっと呻きながら、両手で頭を抱えた。
 痛みがおさまらず、苦痛の呻き声を立て続けているうち、

 あ、ああ……
 呻き声とその質が、変化していた。

 思い出したのである。
 ぼんやりとしていたここまでの記憶、直前の記憶を。
 完全に、思い出していたのである。

 いつしか苦痛ではなく、苦悩に呻いていたのである。
 ぶるぶると、全身を震わせながら。

 自分の涙で、視界が歪んでいた。

 つっ、と涙が頬を伝い落ちた。

 さらわれた(ふみ)()ちゃんを助けるために、東京にあるリヒトの支部へ潜入した。
 戦いになり、たくさんの仲間が殺された。

 それどころか……人質になっていたわたしの義父母、(しゆう)(いち)くんと(すぐ)()さんまでが……

 そして、カズミちゃんと、(はる)()ちゃんが、どろどろに溶けたヴァイスタの中に飲み込まれて、死んだ。

 リヒト所長のために。
 わたしを(オルト)ヴァイスタ化させるという計画、ただそれだけのために。
 「絶対世界(ヴアールハイト)」への扉を開く、とかそんなことのために。

 理想郷でなかろうとも、絶対ではなかろうとも、でも、みんなが必死に守ってきた世
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