第二十六章 夢でないのなら
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った顔が元に戻るのは、さらに一分後であったが。
「もう、いちいち暴力振るうのやめてよ」
「イライラさせるこというからだよ。じゃあ、もしストレスで禿げたら、お前もツルツルに剃れよな」
「えーーーっ。意味が分からない」
「まあ合宿のお風呂でこっそり覗き見たところでは、下の方は剃るまでもなくツル……」
「いわないでええええええええ!」
ボゴン!
カズミの身体が斜めになって、顔が壁の中にめりこんでいた。
アサキに突き飛ばされたのである。
「あ、ご、ごめん、カズミちゃん」
謝るアサキであるが、
先ほどの音、果たしてカズミは生きているのか、
「つう、痛えおでこ痛え……」
壁から抜けるカズミの頭。
無事だったようである。
「ったく凄え力だな!」
「だってカズミちゃんが恥ずかしいこといおうとするんだもん!」
「話を戻すけど……光、空気、音、振動、さっきお互いに感じた違和感も、それが原因かも知れねえな」
ここが宇宙空間のようなところかも知れない、ということである。
「うん。でも、なら……この振動は……」
「お前も、感じてた?」
カズミの問いに、アサキは小さく頷いた。
かたかた、振動している。
足元が、先ほどから震えている。
僅かであったため、取り立てて気にしないでいたのだが、それが段々と激しさを増していた。
微かに感じるから、誰でも気付くはずの荒っぽい振動へと変わっていた。
直接に音が聞こえるわけではないが、どどどどど、と馬の大群が大地を駆けているような、激しい振動へと。
「お前の震えじゃねえの? おしっこもれるう、とか」
ははっと笑うカズミ。
「冗談はやめて」
アサキは、一足先に真面目モード。
カズミの冗談を、にべなく突っぱねた。
アサキは、神経を研ぎ澄ませた。
この振動を、どう感じる?
本当の、馬の大群などではない。
おそらく、一人? 一体?
いや、違うぞ。
二体、三体?
なんなんだ、これは。
どういう……足が、四? 六?
とても重たい、なにかが、とても巨大な、なにかが……
地響き立てて、
どちらへ……
……こちらだ。
真っ直ぐ、
真っ直ぐに、こちらへと走ってくる。
振動が、大きく、激しく、
激しく、
まるで、大地震……
「うわあっ、なんかくっぞーーーっ!」
カズミの叫びと同時に、壁が爆発した。
巨大な生物が、現れたのである。
反対側から、壁を突き破って。
異様な姿であった。
六本足の、巨大な、獣のような、蜘蛛のような、異様な姿であった。
さらに異様たらしめるもの、その巨大な胴体の背から生えている、
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