第二十六章 夢でないのなら
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「さすがに、明るいってことはないだろうけど。どっちにせよ、なにがあるのかまったく見えないや」
「いや、バカよく見ろ。なんか、建物があるぞ。とんがってたり、先が折れ曲がってたり、なんか変なのが見える。そのずっと向こうに、山らしいのも見えるな」
「え、ほ、本当?」
アサキも、通路から室内へと入って一歩、二歩、前へ進みながら、目を凝らした。
確かに、なにか見える。
窓の外、その遠くをよく見ると、暗がりの中に。
幾何学模様的、とでもいえばいいのか、通常感覚で非合理的としか思えないシルエットの建物。
建物の隙間から見えるさらに向こうには、山々の連なり。
「本当だね。……これも、魔力の目で視ているのかな」
「ああ、お前も、気付いてた?」
カズミの問いに、アサキは小さく頷いた。
「さっきの部屋の中も、通路も、この部屋にも、まったく光源がないってことでしょ」
「分かってたか。魔法使いの経験を積むと、魔力の目が無意識になるからな。なまじ見えちゃうから、光があるんだか、ないんだか、分からなくなっちゃうんだよな。今が昼だ夜だ正しく認識さえしていれば、無意識が勝手に調整してくれるんだけど」
「以前にそれ、正香ちゃんから聞いてたから。だからすぐ、おかしいなって疑問に思えたよ」
初合宿の時だったろうか。
大鳥正香から、魔力の目について教えて貰ったのは。
スイッチのオフオンについても、レクチャーを受けた。
あの頃は反対に、意識しないとスイッチが入らない、新米魔法使いだったのだが。
「光だけじゃなく、音もだよね。なんだかね、耳、鼓膜で、音を聞いていないみたいなんだ」
「そうなんだよ! 鈍感なアサキも気付いてたか。伝わってくる振動そのものに意思があって、その意思を音として感じているみてえな」
「わたしは単に、皮膚で受けた振動を、脳が音として捉えているものと思っていた」
だいぶ慣れてはきたが。
この、音を音として聞けていない状態も。
だから、この会話、音声のやり取りに、現在あまり違和感はない。
もともと映像も音声も認識するのは脳であると考えれば、おかしなことでもないのだろう。
「ここ、実は宇宙空間で、空気がねえんじゃねえのか」
「え、どうして空気がないと音が聞こえないの?」
アサキは小首を傾げた。
「てめえ、あたしよか遥かに成績がいいくせに! バカにしやがって! 幾らだ? 喧嘩売ってんなら買うぞお!」
「うわっやめて首を締めないでええええ!」
科学をよく知らず、素で疑問に思っただけなのに、ぎりぎり首締めを食らうアサキなのであった。
アサキが、カズミの全力首締めから解放されたのは、それから三十秒後のことだった。
土気色にな
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