暁 〜小説投稿サイト〜
魔法使い×あさき☆彡
第二十六章 夢でないのなら
[17/19]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


「さすがに、明るいってことはないだろうけど。どっちにせよ、なにがあるのかまったく見えないや」
「いや、バカよく見ろ。なんか、建物があるぞ。とんがってたり、先が折れ曲がってたり、なんか変なのが見える。そのずっと向こうに、山らしいのも見えるな」
「え、ほ、本当?」

 アサキも、通路から室内へと入って一歩、二歩、前へ進みながら、目を凝らした。
 確かに、なにか見える。
 窓の外、その遠くをよく見ると、暗がりの中に。
 幾何学模様的、とでもいえばいいのか、通常感覚で非合理的としか思えないシルエットの建物。
 建物の隙間から見えるさらに向こうには、山々の連なり。

「本当だね。……これも、魔力の目で視ているのかな」
「ああ、お前も、気付いてた?」

 カズミの問いに、アサキは小さく頷いた。

「さっきの部屋の中も、通路も、この部屋にも、まったく光源がないってことでしょ」
「分かってたか。魔法使いの経験を積むと、魔力の目が無意識になるからな。なまじ見えちゃうから、光があるんだか、ないんだか、分からなくなっちゃうんだよな。今が昼だ夜だ正しく認識さえしていれば、無意識が勝手に調整してくれるんだけど」
「以前にそれ、(せい)()ちゃんから聞いてたから。だからすぐ、おかしいなって疑問に思えたよ」

 初合宿の時だったろうか。
 大鳥正香から、魔力の目について教えて貰ったのは。
 スイッチのオフオンについても、レクチャーを受けた。
 あの頃は反対に、意識しないとスイッチが入らない、新米魔法使いだったのだが。

「光だけじゃなく、音もだよね。なんだかね、耳、鼓膜で、音を聞いていないみたいなんだ」
「そうなんだよ! 鈍感なアサキも気付いてたか。伝わってくる振動そのものに意思があって、その意思を音として感じているみてえな」
「わたしは単に、皮膚で受けた振動を、脳が音として捉えているものと思っていた」

 だいぶ慣れてはきたが。
 この、音を音として聞けていない状態も。
 だから、この会話、音声のやり取りに、現在あまり違和感はない。
 もともと映像も音声も認識するのは脳であると考えれば、おかしなことでもないのだろう。

「ここ、実は宇宙空間で、空気がねえんじゃねえのか」
「え、どうして空気がないと音が聞こえないの?」

 アサキは小首を傾げた。

「てめえ、あたしよか遥かに成績がいいくせに! バカにしやがって! 幾らだ? 喧嘩売ってんなら買うぞお!」
「うわっやめて首を締めないでええええ!」

 科学をよく知らず、素で疑問に思っただけなのに、ぎりぎり首締めを食らうアサキなのであった。

 アサキが、カズミの全力首締めから解放されたのは、それから三十秒後のことだった。
 土気色にな
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ