第二十六章 夢でないのなら
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こはなんともないじゃないか。
ならば、誰がいてもいいはずだ。
「なんか、怖いよ……」
不安な気持ちが、口を突いて出ていた。
瞬間的に、
「ヘタレ女」
ぷぷっ、とカズミに笑われて、吹き飛ばされてしまうのだが。
「酷いよカズミちゃん! こんなところ、怖いと思うのが当たり前でしょう」
「はいはいそうですねえ。でももう、おしっこは漏らすんじゃないぞお」
「漏らさないよ! なあに、でももうってさあ」
間違ってはいないけど。
何回か、みんなの前で漏らしてしまったことがある。
でも、ここでそんな過去のことをからかって、どうなるというんだ。
と、心の中でぶつくさ不満を発しているアサキであったが、うわっと突然カズミに大声を出されて、びくり肩を震わせた。
「なあに急……」
「おっ、ようやく分かれるところがあるみたいだ! アサキの秘技おしっこ漏らしの話なんかはあとだっ!」
カズミは、たたっと軽快に走り出した。
誰がいるのか分からないから、静かに歩いていたのに、大声に足音に台無しである。
「待ってよおっ」
台無しついでに、アサキも大声で後を追う。
前方に見えるは、歪んだY字の分かれ道。
右は、ここまでの眺めとあまり変わらない、ゆるやかなカーブを描いている。
左は、急角度で折れている。
ならば変化を期待して、と左へ折れる二人であったが、本当に、変化がいきなり訪れた。
曲がってすぐに突き当り、足にブレーキも掛け切らないうちに、そこに扉があって、音もなく開いて、暗闇が二人の前に広がったのである。
「外だ……」
ぼそり。
アサキは、呆けた表情になっていた。
正確には、ここは外ではない。
なんの用途を想定しているのか、物のなんにもない、広大な部屋である。
四方のうち一面に、歪んだ大小の窓がたくさんある。
すべてに、ガラス板のような物が張られている。
その、窓の向こう側にある暗闇を、アサキは外だといったのである。
「てことは、少なくともここは、宇宙船の中じゃないってことか」
カズミが、用心深く見回しながら、腕を組み、一人頷いている。
「え、宇宙船ってガラス窓とかないの?」
ある。
「間抜けかお前はあ! あったら、もしひび入っただけで大パニックだぞ」
いや、窓は存在するのだが……
「あ、ああ、そうか。そうだね」
「だろ?」
「……でも、宇宙船じゃないのは分かったけど、外の景色が、なんにも見えないね」
漆黒が、あるばかりだ。
現在は夜、ということなのか。
魔力の目は心臓の鼓動と一緒で、ほぼ無意識に働くため、実際に明るいのか、暗いのか、よく分からないのだ
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