第二十六章 夢でないのなら
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ちなアサキの態度を察したようで、
「分からねえよ。……あたし自身のことすら分からないんだから。あたしと治奈と二人で、骨まで溶けて、混ざり合って、河のように流れるヴァイスタの中、もうすべてが真っ白で、ああ、このまま消滅するんだな、って身も意識も、とろんと溶けるがままに漂い始めたと思ったら、ここにいたんだ」
ここ、つまりは先ほど通り過ぎた部屋の、ベッド、そこから転げ落ちて、床に寝ていた、ということである。
「そうなんだ」
「うん。しっかしさあ、あたしもだけど、お前もよく、あそこまで無茶苦茶な状態にされていて、身体が元に戻ったよな」
アサキは四肢を至垂徳柳によって切断され、
負のエネルギーの放出で、肉体の残りもぼろぼろと崩れ、
ほとんど生首、という状態で、
さらに、頭部の半分を叩き砕かれて、
そこまででも、キマイラとはいえ生きているのが奇跡であるというのに、さらに肉体が溶け続けて、おそらく、完全に世界から消滅した。
そして、なおも我を忘れて暴走する魂、意識の中、慶賀応芽と出会い、彼女に優しく抱き締められて、そして、気付けばカズミ同様、ここにいた。
「とても、不思議なんだけどね」
夢だったのならばともかく。
でも、先ほどお互い記憶の擦り合わせをしたので、リヒトでの戦いや結末が、夢でなかったことは分かっている。
現在がまだ夢の中、ということでもない限りは。
だから、不思議なのである。
ほとんど肉体を失ったどころか、完全に消滅したはずなのに、何故ここでこうして生きているのかと。
「なにが、どうなんだろうな。ま、あたしたち自身がこんなだし、だから、誰がどうとかまったく想像も出来ねえけどさ……進めばなんとかなると思うしかねえべ」
「うん」
「カズミ艦隊、全速前進!」
「うん。……なあにカズミ艦隊って」
二人は、歩き続ける。
うねうねと、ゆるやかな曲線を描く、チューブの中といった感じの通路を。
道標のない中を。
あてとしては、誰か人に会うことだろう。
人との接触がなくとも、とにかくここがどこかを知ること。
現状がどうなっているのか、認識すること。
そのため、こうして歩いているわけだけど、
でも、おかしくないか?
アサキは思う。
なにがって、
何故ここまで、誰もいないのだろう。
カズミちゃんのいう通り、ここもリヒトの研究所だとして、わたしはフミちゃんを助ける際に警備員に潜入を気付かれないよう魔法を使ったくらいだったのに。
それが何故、誰もいない。
わたしが起こした、あの騒動で、周囲のみんな吹き飛ばしてしまった?
でも、こ
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