第二十六章 夢でないのなら
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破壊するしかなかった。
こちらは、そんな形跡はまったくない。
「前に立ったら音もなく開いたからな。離れたら勝手に閉じたし」
ならば、アサキのいた部屋の扉は、やはり壊れていたということなのだろう。
開閉しないのならば、どうやってそこへ運ばれたのか、何故そんな部屋を選んだのか、という疑問は残るが。
などと考えていても、仕方ない。
二人は進む。
無意味にうねうねとしているため分岐点もないのに先が見通せない、チューブ状の中を。
防犯とか情報守秘などなんらかの理由で、あえて見通すことの出来ない通路の造りにしているのだろうか。
それとも単なるデザイン。
歩行そのものは、ほとんど身体を傾けることなく、ほぼ真っ直ぐ進んでいける。でも、見た目が見た目なので、進んでいると、すっかり迷ってしまった気持ちになる。
まだ分岐点にも差し掛かっていないのだから、引き返せば確実に戻れるのに関わらず、戻れるか不安になる。
まあ、自分たちのいた部屋に戻ったところで、そこになにがあるわけでもないのだが。
もう、なにかがあるまで、誰かと会うまで、デタラメにでも進むしかない。
願わくば、会いたくない類の人や、悪霊などとは、遭遇したくないものだが。とはいえ、なんであれ遭遇さえすれば、現状の判断は出来るわけで、複雑な心境ではあるが。
「カズミちゃん」
赤毛の少女、アサキが、不意に呼び掛ける。
「なに?」
茶髪ポニーテールの女子が、顔を真っ直ぐ向けたまま返事だけする。
「あのさ、不安、というか、疑問に思ったんだけど、ここに、カズミちゃんがいる、ということはさ、あ、あの、た、ただ疑問に思っただけなんだけど」
「もったいつけずに、とっとといえよ」
「あ、う、うん。は、は、治奈、ちゃんは……」
もったいつけるつもりはない。
が、続きを継げず、アサキの口は半開きのまま固まってしまう。
どのような理由があって、自分と、カズミと、ここに二人きりなのか。
それは分からない。
もしも、中央結界内の、光の扉、そのそばに倒れていたからという理由であるならば、そこには治奈も一緒にいたではないか。
三人とも、どろどろに溶けた。
溶けて、カズミと治奈は、液体化したヴァイスタに飲み込まれた。
その後、誰かに助けられた?
あんな状態の自分たちを、どんな処置で?
助かったのは、微かにでも、生命が残っていたから?
だとすると、
治奈ちゃんが、ここにいないということは……
と、そのような理由で、言葉を続けようにも口がまったく動かなかったのである。
人の、友の、生き死にを推測で語りたくなかったから。
カズミはその、躊躇いが
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