第二十六章 夢でないのなら
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で、ぴったりと膝を閉ざして。
必要以上にきつく力を入れて閉じているのは、まあ当て付けというものである。
「ねえ、どうしてここがリヒトの研究所だと思ったの?」
アサキは尋ねる。
「じゃあ他にどこだよ、って話だ。……リヒトの研究所では、キマイラってのを作っていたんだろ? で、まだ信じられねえけど、お前とか、至垂のクソとか、あと、あの戦ったくそ強え魔法使いたちが、そのキマイラだった」
「うん。わたしも、実感があるような、ないようなだけど」
キマイラ。
それは人工臓器を融合させた、新たな生命体である。
アサキは、人型のキマイラとして、リヒトの科学力により生み出されたのである。
人型キマイラの中で、特に魔力係数の高い者を、魔道器と呼ぶ。
アサキは、その魔道器である。
絶望した魔法使いがヴァイスタになる、という説からの発展研究で、将来の超ヴァイスタ化を見越して作られた生物。と考えれば、魔道器であること当然ではあるのだが。
「例えばさ、あたしも、この建物で、キマイラとして作り出されたのかも知れない。お前も、あらためてもう一回。あたしたちやっぱり、あの時に死んでてさ、記憶だけを受け継いでてさ。……さっき指が触れ合った時に、こいつ誰だってお互いに思ったのも、そう考えると納得がいくだろ」
「気持ちの悪いこというの、冗談でもやめて欲しい。話の辻褄は合うよ。でも、わたしたち二人とも、もう死んでいるだなんて、そんなこと考えたくないよ」
「世界を吹っ飛ばそうとしたやつが、よくいうぜ。吹っ飛ばされたら、みんな死ぬだろうが」
「ごめん……」
アサキは、申し訳なさそうに頭を下げた。
「おい、冗談にいちいち謝るなよ。仕方ない事情なのは、こっちも分かってんだからさあ」
「うん。ごめんね」
「だから謝んなあああああああ! 今度謝ったら、服もパンツもびりっびり再生不可能の職人芸的に細かく引き裂いて、全裸にひん剥いて、落書きしまくって、ちっちぇえオッパイのとこもぐるぐる渦巻き書いて、色々丸見えの恥ずかしい姿勢のまま荒縄で縛り上げて、通路を端から端まで、ごろんごろん転がすからな!」
「え、えーーーっ」
なんでそこまでされなきゃならないのお!
といった、泣き出しそうな情けない表情を浮かべるアサキであるが、それはすぐ笑みへと変わった。
この横暴身勝手に思える言動は、カズミなりの気遣いであって、それがなんとも嬉しかったからだ。
ただし、本当に脱がされ転がされたりもされかねないので、ちょっと不安ではあるけれど。
「しかし、リヒトって、こんな妙ちくりんな建物を作るんだな」
ばたんごろりん、カズミは片膝に足首を乗せたまま、アサキいわく見えち
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