第二十六章 夢でないのなら
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ここはなんとも、奇妙かつ不気味な部屋であった。
光源がなく、闇の中を魔力の目のみで見ている、ということを差し引いても。
広さは、学校の教室を半分にした程度で、細長い。
闇の中であるため本来の色はよく分からないが、床も壁も天井も白っぽい。
壁は平らではなく、直径数センチのパイプ状の物が無数に編まれて形を作っていたり、元は平らだったのかも知れないが鉄球をぶつけたかのようにぼこぼこと陥没している。
天井からは、食虫植物にも思えるものが、無数ぶらさがってふるふる震えている。
部屋の真ん中には、測定器具にも、単なるオブジェにも見える、幼児が描いた妖怪を元に作ったブロンズ像とでもいうべき、意味の分からない形状の物体が置かれている。
なんなのだろう、ここは。
自分がいるのは、部屋の端だ。
腰を掛けているのは、おそらくベッドだ。
気が付いた時には横たわって天井を見上げていたのだが、現在は上体だけを起こして足を床に投げ出している。
上体を支えるために着いている手を、なんとなくずるりずらしてみたところ、指先にへこんだものの感触があった。
見ると、ベッドが少しくぼんでいるのだ。
どうやら自分は、このくぼみに身体を半ばめり込ませて、横たわっていたようだ。
「気味が、悪いな」
遥かな未来世界へと、訪れたかのような感覚だ。
ベッドのへこみをなでているうちに、自分の左腕に着けられているリストフォンが目に入った。
魔力制御システムであるクラフトが内蔵されている、特殊なリストフォンだ。
強化プラスチック素材で覆われ、銀色基調に赤い装飾の入った、メンシュヴェルトからの支給品である。
上着のポケットにもなんとなく手を入れてみると、確かな感触。
取り出したのは、真紅のリストフォンである。
こちらは、現在主流の強化プラスチック製ではなく、古いのか新しいのか全体が金属製。
全体が、真っ赤な物である。
もしかしたらすべてが、自分が魔法使いであることすら夢ではないか。そう考えて、リストフォンを触ってみたのであるが、少なくともすべて夢、ではなかった。
クラフト内蔵リストフォンを腕に着けているからには、やはり自分は魔法使いなのだろう。
ポケットに入っていた、この真っ赤なリストフォンを持っているということは、ウメちゃんとの記憶も確かということだろう。以前にリヒト支部で、真紅の魔道着を着たウメちゃんと戦ったことが。
でもならば、何故わたしはこんなところにいるのだろうか。
このような普段着姿で、こんなところに。
わけが分からない。
考えるほどなんだか不安が増してしまい、なんとなく周囲をきょろきょろ見回した。
奇抜な造りの壁に囲まれた、奇妙な
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