情報収集
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顔を真っ青にする。
「狂三ちゃんッ! だめだよ、アンチ君嫌がってるッ!」
それ以上は見ていられなくなった響が、狂三を止める。彼女の腕を解き、アンチを背中に回す。
「きひっ、きひひひひっ……」
ほほ笑みながら、狂三はまたアンチに近づく。唇を舐めた彼女が、またアンチを狙っているようだったので、ハルトは大道芸の再開を中断し、狂三の前に割り込んだ。
「時崎狂三。聞きたいことがある……」
「マスターの場所はお答えいたしませんわ」
それは予測できていた。
ハルトは彼女の機嫌を損ねないように、言葉を選ぶ。
「この子の探し物を探しているんだ」
「探し物?」
その言葉に、狂三は首を傾げた。
ハルトの説明は、響が引き継いだ。
「ムーンキャンサーってものを探しているらしいんだけど、狂三ちゃん知らない?」
「ムーンキャンサー……? 知りませんわね。何ですの?」
「俺たちも知らないんだ。そうか……もう少し情報を集めないとね」
「お待ちください。ウィザード」
大道芸に戻ろうとするハルトを、狂三が呼び止めた。
「貴方は、そのムーンキャンサーがどういうものか分からないのに、探しておりますの?」
「さあ? 月の蟹って言うんだから、蟹のペンダントとかじゃないか?」
「……そうですわね」
ハルトの返答に、狂三は目を反らした。
「どうしたの?」
「いいえ。何でもありませんわ」
狂三は次に、胸元に抱きかかえるアンチの頭を撫で始めた。
「ええ。ええ。……ウィザード」
狂三は、静かに長い前髪をかき上げた。露わになった彼女の金色の左目が、アンチを見下ろしている。
数秒アンチを見下ろした狂三。やがて、じっとハルトを見つめ。
「……人間ではありませんわね?」
「っ!」
「……この子のことですわ」
一瞬目を細めた狂三は、かき上げた手を放し、再びアンチの頭を撫でる。彼のつむじ部分を手で?きまわしながら、目を歪めた。
「ええ。ええ。間違いありませんわ」
その言葉に、アンチは狂三の手を振り払う。そのまま彼はおぼつかない足取りでハルトの小道具を蹴り飛ばし、狂三と向かい合う。獣のように歯をむき出しに、敵意を見せている。
「アンチ君!」
「ああああああっ!」
ハルトが止める間もなく、アンチが狂三に飛び掛かる。
狂三はほくそ笑みながら、アンチの腕を受け流す。
「あらあら。きひひっ」
狂三は再びアンチの背後に回り込み、その肩を上から抑える。
動きを止められたアンチは、その頬に触れる狂三の顔に、顔を引きつらせる。
狂三はそのまま、アンチの両腕に手を絡ませる。
「……令呪はなし……」
「いい加減にしてよ」
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