情報収集
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ンを投げ渡す。
足場の悪い場所での、三本ピンのジャグリング。だが、虚ろな目で行き交う見滝原南の人々は、誰もハルトを見て、足を止めることはなかった。
「……誰も見てくれないね」
「まあ、この程度じゃそうかもね。……ん?」
「おお……」
だが、ただ一人。
アンチが目を輝かせてハルトの芸を見上げていた。さっきの彼の、猟犬のような
この子が見てくれるだけでもいいか。
「さあ、続いてお見せしますのは……」
「あら? ウィザード」
その甘美な声に、ハルトは思わずバランスを崩した。
ただでさえ不安定な足場で、集中できなければ維持できるはずがない。そのまま足場の板と筒を崩し、空中に投げ出される。
「うわっ!」
「あだッ!」
空中で足を振りもがく。だが、その拍子に筒を蹴り飛ばし、そのまま響の頭に命中してしまった。そのまま大きなたんこぶを作り、響は仰向けに地面に伸びてしまった。
「いつつ……何?」
腰をかくハルトは、声をかけてきた女性を見上げる。
昨夜、病院で現れた、どこかの高校の制服を纏った片目の女性。
彼女は「あらあら」とほほ笑みながら、ハルトを見下ろしている。
「時崎……狂三!」
「まだこの地にいらっしゃいましたのね。ウィザード」
彼女は冷ややかな眼差しでハルトを見下ろす。
「それにしても、まさかこんな曲芸をしているなんて……変わった趣味ですわね。どんな曲芸を見せてくれますの?」
狂三はほくそ笑む。
「……まさか、君が来てくれるなんて思わなかったよ」
「あら? 何の話ですか? ……それにしても、まだこの場にいるなんて。昨日見逃したのは、あくまでお医者様に免じて。もう一度言いますわ。この見滝原南を去りなさい。それとも、この大勢の人の前で聖杯戦争を始めましょうか?」
彼女は答えないハルトに向けて吹き出し、流れるようにハルトを、そしてランサーである響を睨み。
ただ一人。ハルトの次の出し物を楽しみに待っているアンチを捉えた。
「……あら?」
狂三の声に、アンチが振り向く。
見れば、アンチの険しかった表情が、徐々に怯えていくではないか。なぜかと思えば、狂三がまるで亡霊のように静かにアンチに近づいているのだ。
「な、何!?」
「あらあらあら。可愛いですわ。可愛いですわ」
背後に回り込んだ狂三は、ゆっくりとアンチの顎を撫でる。
「や、やめろ!」
抵抗するが、体格的にも狂三の方が上。
やがて首をがっちりとホールドする狂三に、アンチはもがき始めた。
「きひひひっ! 可愛いですわ。可愛いですわ。ここまでくると、食べてしまいたいくらいですわ!」
「……っ!」
その言葉に恐怖を感じたアンチは、
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