暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/WizarDragonknight
情報収集
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ンを投げ渡す。
 足場の悪い場所での、三本ピンのジャグリング。だが、虚ろな目で行き交う見滝原南の人々は、誰もハルトを見て、足を止めることはなかった。

「……誰も見てくれないね」
「まあ、この程度じゃそうかもね。……ん?」
「おお……」

 だが、ただ一人。
 アンチが目を輝かせてハルトの芸を見上げていた。さっきの彼の、猟犬のような
 この子が見てくれるだけでもいいか。

「さあ、続いてお見せしますのは……」
「あら? ウィザード」

 その甘美な声に、ハルトは思わずバランスを崩した。
 ただでさえ不安定な足場で、集中できなければ維持できるはずがない。そのまま足場の板と筒を崩し、空中に投げ出される。

「うわっ!」
「あだッ!」

 空中で足を振りもがく。だが、その拍子に筒を蹴り飛ばし、そのまま響の頭に命中してしまった。そのまま大きなたんこぶを作り、響は仰向けに地面に伸びてしまった。

「いつつ……何?」

 腰をかくハルトは、声をかけてきた女性を見上げる。
 昨夜、病院で現れた、どこかの高校の制服を纏った片目の女性。
 彼女は「あらあら」とほほ笑みながら、ハルトを見下ろしている。

「時崎……狂三!」
「まだこの地にいらっしゃいましたのね。ウィザード」

 彼女は冷ややかな眼差しでハルトを見下ろす。

「それにしても、まさかこんな曲芸をしているなんて……変わった趣味ですわね。どんな曲芸を見せてくれますの?」

 狂三はほくそ笑む。

「……まさか、君が来てくれるなんて思わなかったよ」
「あら? 何の話ですか? ……それにしても、まだこの場にいるなんて。昨日見逃したのは、あくまでお医者様に免じて。もう一度言いますわ。この見滝原南を去りなさい。それとも、この大勢の人の前で聖杯戦争を始めましょうか?」

 彼女は答えないハルトに向けて吹き出し、流れるようにハルトを、そしてランサーである響を睨み。
 ただ一人。ハルトの次の出し物を楽しみに待っているアンチを捉えた。

「……あら?」

 狂三の声に、アンチが振り向く。
 見れば、アンチの険しかった表情が、徐々に怯えていくではないか。なぜかと思えば、狂三がまるで亡霊のように静かにアンチに近づいているのだ。

「な、何!?」
「あらあらあら。可愛いですわ。可愛いですわ」

 背後に回り込んだ狂三は、ゆっくりとアンチの顎を撫でる。

「や、やめろ!」

 抵抗するが、体格的にも狂三の方が上。
 やがて首をがっちりとホールドする狂三に、アンチはもがき始めた。

「きひひひっ! 可愛いですわ。可愛いですわ。ここまでくると、食べてしまいたいくらいですわ!」
「……っ!」

 その言葉に恐怖を感じたアンチは、
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ