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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第67話 燃やされるモノ
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として第五四装甲機動歩兵師団隷下の装甲戦闘車小隊で副小隊長兼車長の時でした」

 初の実戦はパランティア星域ケルコボルタ星系第七惑星上での対基地地上戦。自分の所属する小隊が帝国軍の同類を吹き飛ばし、一気に前哨基地に殴り込みをかけた。
「基地内部には既に装甲部隊も擲弾兵もなく、対車両兵器を持った軽歩兵ばかり。小隊長車がミサイルでやられたので臨時に指揮を執ることになり、私はいまだミサイルを構える軽歩兵に対し急進しての同軸荷電粒子ビーム・バルカン砲による掃射を指示しました。一瞬でしたよ。一〇人近い敵軽歩兵がミンチになったのは」
「……」
「それからすぐに中隊長から有視による基地内偵察を命じられ、装甲戦闘車から這い出てみましたが、目の前のミンチを見たら体が硬直して動けなくなりました。結局若い少尉のはじめての実戦に気を利かせた先任軍曹が、任務を代行してくれました」
「私もそうなると?」
「非人道的で誠に身勝手な言い分になりますが、少佐という地位は地上軍においてはかなりの権力を持ちえます。故に兵士達は自分に死ねと命じる相手のことを常に観察してます。死体を見た『ぐらい』で硬直するような上級士官など、彼らにとっては軽蔑対象です」

 これは今回の地上軍主体の作戦で、宇宙軍の俺が敵味方双方を極力殺さないよう計画したことに対する地上軍側の奇妙な不信感と隔意が産まれつつあるということを、ジャワフ少佐がそれとなく伝えてきているということか。眉を潜めてジャワフ少佐を見ると、少佐の表情には呆れが浮かんでいた。

「地上軍が宇宙軍をあまり評価していないのはそういう救いがたいところなのです。私も地上軍の将校ですが、同輩のそういう点だけはどうにも好きになれません。あまり大きな声では言えませんがね」

 そういう一歩引いた冷静さと、宇宙軍に対する隔意の無さが、彼を連絡士官にしたのであろう。後方勤務が長かったと思われるロックウェル大将が、アッテンボローとシェーンコップを捕縛するのに彼を用いたのも、能力もさることながらそういう憲兵でもなければ野戦軍でもない、柔軟な精神構造が任務に必要だと判断したからだと。シェーンコップのような誰の目にも明らかにわかる異端者ではないが、この人もまた地上軍では異端者なのだ。

「ジャワフ少佐は、宇宙軍の戦闘を、戦闘宙域内でご覧になったことは?」
 俺は、ぼんやりと要塞に向かって進軍する地上軍の動きを映すパネルを見ながら、呟くように言った。同じようにジャワフ少佐もこちらを見ることなくパネルに視線を向けたまま答える。
「残念ながら後方待機の輸送艦か降下母艦からしか見たことがありません」
「要塞に使われてる帝国軍の巡航艦、一隻当たりだいたい一五〇人から二〇〇人くらい人が乗ってます。それが一条の中性子ビームで、一介の光点になります」
「…
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