ガンバルクイナ
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
目を開けた。
それまでは穏やかな寝顔だったのに、その赤い眼が覚醒した途端に、その表情が険しくなった。
「気が付いた?」
ハルトが声をかけたのは、先ほど、紫の怪物に変身していた少年。
紫の髪とボロボロの布切れが特徴の彼は、ハルトが背負い、そのまま病院に連れて来られていた。
あの医者は、Uターンしてきたハルト達を見て最初は怪訝な顔をしていたが、ハルトが背負ってきた少年の姿を見て一転、病室に迎え入れてくれた。
布団を蹴り飛ばした少年は体を起こす。だが、即座に痛みによって体の動きを震わせているが、それ以上にハルトと響への警戒を強めている。
「うっ……!」
「だ、大丈夫ッ!?」
彼の動きに、響が駆け寄った。彼女は心配そうに少年を見下ろし、
「よかった……大丈夫そうだねッ! お医者さんを呼んでくる!」
響はそう言って、病室を飛び出した。
「騒がしいな……」
ハルトは響を見送り、静かに病室に入る。
獣のように牙を向く少年が、ハルトを獣のような目つきで睨んでいる。
「大丈夫。大丈夫」
ハルトは両手を上げて、敵意がないことを示す。
そのまま一歩ずつ少年に近づき、腰を曲げる。
少年と目線を合わせ、指輪を発動させる。
『コネクト プリーズ』
魔法陣に手を入れる。ラビットハウスの自室に安置してある
『こんにちは』
ハルトが引っ張り出した、黄色の人形。鳥をゆるキャラの形に落とし込んだそれ。腹部の赤いハートマークが特徴のそれに右手を入れて、少年にパペットマペットの人形を向き合わせる。
『こんにちは。怖くないよ?』
ハルトは決して口を動かさない。だが、普段とは異なる声色を放った。
腹話術。
ラビットハウスでチノが行っているのを参考に習得したが、実演するのは初めてだ。
明るい声でハルトは続ける。
『ボクはガンバルクイナ! よろしくね!』
「うううう……」
だが、少年は唸り声を収めない。
腕でガンバルクイナ人形を爪で引っ?こうとするが、ハルトは人形を上げてそれを避ける。
「おおっと……『大丈夫だよ。ボクは君と友達になりたいんだ』」
あくまでガンバルクイナの声を維持したまま、ハルトは会話を続ける。
『大丈夫。ボク悪い鳥じゃないよ?』
ガンバルクイナの腕を伸ばし、少年に握手を促す。
少年は口をぽかんと開けながら、手を伸ばす。ガンバルクイナの手を通して、ハルトの指先を揺らす。
ハルトはほほ笑みながら、ガンバルクイナを通じて少年と握手を続ける。
『お腹が空いたの? これ食べようよ』
ハルトは響から預かった菓子パンを取り出し、ガンバルクイナに持たせた。ガンバルクイナを上手く操作し
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ