ガンバルクイナ
[4/4]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
どうすればいいんだよ……!」
ハルトは毒づきながら、二人を追いかけようとガラスのない窓に足をかける。その時。
「一つだけ、言わせていただいてもよろしいでしょうか?」
それは、事務所に戻ったはずの医者からの言葉だった。
サングラスを胸ポケットからのぞかせたままの彼は、静かにハルトへ語った。
「キャンサーという単語には、蟹という単語の他にも、癌という意味があります」
「癌? 癌って……病気の?」
「ええ。ムーンキャンサーを直訳すれば、月の癌と読み替えることもできますよ」
「月の癌……? それだと、ますます意味が分からないな」
「まあ、十中八九私の推論は外れているでしょうが。中年の戯言と聞き流してください」
「いえ……ありがとうございます」
ハルトは医者に礼をして、響とアンチの後を追いかけて、窓から飛び出していった。
そんなハルトの後ろ姿を見つめながら、医者は静かに、しまったサングラスを再びかけた。
見滝原南。
廃墟の一角の、建物の内部。
ハルトたちがアンチを保護していた頃、ハルトたちと戦い、唯一の生き残りである怪鳥は、陽の光が届かない室内で静かにその身を屈ませていた。
この廃墟の住民も粗方腹に放り込み、体も十分休ませた。
やがて時が経つと、その肉体に変化が起き始めた。
メキメキと骨格が揺れ動き、肉体が膨れ始める。
人間に等しい大きさのそれは、人より二回り上の大きさに成長していく。皮膚が突き破られ、その内側から新たな表皮が顔を覗かせる。
そして。
凶悪なその鳴き声を、怪鳥は昼の空へ轟かせた。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ