ガンバルクイナ
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、両手で菓子パンを持たせる。
少年はしばらく菓子パンとガンバルクイナ、そしてハルトの顔を見比べる。
やがて恐る恐る菓子パンの包みを剥がし、頬張る少年。
ハルトは安心して、ガンバルクイナの腹話術を再開した。
『仲良くなるにはまずお名前から! 君のお名前は何て言うの?』
ガンバルクイナが、両手を上げて尋ねる。
少年は顔を険しくしたまま、小さな声で呟いた。
「……アンチ」
「アンチ?」
変わった名前だな、という印象を抱いたハルトは、思わず地声で反応してしまった。一瞬アンチと名乗った少年が顔を上げてハルトを見上げるが、すぐさまハルトはガンバルクイナの声に戻る。
『そうなんだ! よろしくね! アンチくん!』
誤魔化すように、ガンバルクイナの両腕でアンチの右腕と握手する。アンチは驚いた表情をして固まりながら、腕をガンバルクイナのなすがままに上下していた。
その時。
「ほら! 先生!」
響の声で、ハルトとアンチのやりとりが中断された。
入り口を見れば、響が医者を連れてきていた。今朝この病院を出発したとき、そしてついさっきアンチを連れてきたときと同じく、サングラスを着けている医者。
「元気になったのかな? よかったよッ!」
響の声に、またしても少年、アンチは警戒を示す。彼はそのままベットから壁に張り付き、菓子パンを胸に抱えた。
「あっ! 響ちゃん、タイミング悪い……」
ハルトは頭を掻く。
「へ? どうしたの?」
「いや、何でもない……」
ハルトはそれ以上の言及を避けて、腹話術を続ける。
『ボク、友達が欲しいんだ。一緒にお話ししてくれないかな?』
「本当ッ!」
ガンバルクイナのセリフに、響が歓喜した。
気が散るな、と思っても口に出さず、ハルトはガンバルクイナのロールプレイを続ける。
「嬉しいねッ!」
響は、そう言ってガンバルクイナの腕と握手をする。ハルトはガンバルクイナの腕を通じながら、あきれ顔を浮かべる。
響がガンバルクイナの手を放すが、なぜかその拍子に、ガンバルクイナのパペットマペットが吹き飛んでしまった。
「あッ!」
「……響ちゃん、君が夢中になってどうするさ……」
「ご、ごめん……」
響は頭を掻く。
だが、彼女のアイスブレイクは結果的には役に立ったようだ。
アンチと名乗った少年は、すでにガンバルクイナではなくハルトの顔を見上げている。
ハルトは彼と目線を合わせて、ほほ笑む。
「アンチ君、でいいよね?」
ハルトの問いに、少年___アンチは頷いた。
「俺は松菜ハルト。こっちの女の子は立花響ちゃん。俺たちは君に危害を加えたりしないよ。大丈夫。……まあ、ちょっと教え
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