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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第二章:空に手を伸ばすこと その四
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ことの繰り返しをこの一月は続けている。その例に漏れず、波才は再び日を跨いで策謀することを決めた。既に昼のうちから自軍に危機が迫っているとも知らずに。





 松明を持ってゆっくりとした歩みで陣外を見張る。波才軍陣営を哨戒する兵は大層不満そうな顔で職務に就いていた。
 かれこれ一月は女も抱かず、酒も満足に飲み干せやしない。頭はいったい何をしているんだ、早く攻撃しないのかと不平不満がぼろりと毀れてくる。表で不満をいえないのは、不満をいってがために軍規を正すために見せしめとして処刑された奴を知っているからだ。しかし見えないところでは誰もが波才の事を快く思っていないのは明らかである。この哨戒をする男も同じ口で、この半月は何度も陰口を叩いている。退屈の余り欠伸が出そうとなり、目をつぶって大きく口を開ける。
 その瞬間、ひゅんと風を切る音が走って賊の口の中で止まった。口腔の奥に止まった衝撃と違和感に強く驚いて声を出そうとしたとき、二つ目の音が男の喉下に刺さる。声帯を見事に射抜かれた男は口の奥から血反吐を毀れ、どろりと溢れ出す血を止めようとして喉元に手をやり、さらに追い討ちをかけるように走ってきた三つ目の音が頭を刺すと、糸が切れた人形のように倒れ込む。
 数秒経っても男が起きてこないことを確認すると、ゆっくりと黒影から数人の者達が走り寄ってくる。

「よし、手筈通りにやれ」

 走り寄ってきた男達の中から一人が囁くと、全員が音を一切立てないように黄巾賊の陣営に侵入していく。
 どうも入ってニ町|《≒218メートル》もしないところに兵糧を蓄えている場所があるらしい。よくもこんな馬鹿なことした連中に自分達は追い込まれたものだと思いながらも、男達はゆっくりと懐から水筒を取り出す。しかし中に入っていたのは火の勢いを増す油であった。
 彼らはそれを兵糧や天幕に範囲が広がるようにかけると、近くにあった棒を拾い上げて篝火から火を灯した。一瞬火が強くなり男達の表情が見える。鬼気迫った様子のそれは、これまでの恨みを晴らすかのように皺を寄せており、目には簡単には消えそうにない復讐の炎が映り出されていた。
 男達はそれぞれ油をかけた場所に火をつけると、火が広がらないうちにその場を後にしていく。他の場所にも火をつけにいくのであろう、男達は振り向くことを一切しなかった。





「夏候惇将軍。夜空が燃えているぞ」
「あぁ分かっている!!」

 仁ノ助は長社まで残りはニ里|《≒8キロ》もない所まで足を進めている。曹操軍第一陣の行軍の足は速められており、暗い夜空に一際目立って輝く赤い光の根源に向かう。この不自然なまでに輝く光はどうみても原因は炎である、それもかなり勢いが強く燃えているのが遠目からでもわかる。
 一里にも近づくと敵陣に起きている事
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