アスターテ星域会戦@
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倒的に有利で、総力戦ならともかく局地戦では勝ち目がありません」
「…………」
パストーレは黙り込んでしまった。彼の顔からは血の気が引き、その額には汗が滲んでいる。作戦開始後こそ始めはクロパチェクの各個撃破を懸念する発言や作戦案ををあり得ないと一蹴したが、実際に敵が仕掛けてきたという事になれば話は別である。
彼は自由惑星同盟軍の軍人として多くの戦場を経験し、その中で常に冷静かつ合理的な判断を下して来た。同期の第2艦隊司令官パエッタをして『百戦錬磨』と言わしめたその経験からくる自信が彼を支えていたのである。だが、その経験をもってしても想定外の事態に遭遇すると混乱するのは器量というより彼の性格に起因するものであった。
「閣下、今は悩んでいる時ではありません。決断しなければ帝国軍が攻撃を開始してしまいます。そうなってしまえば我々は為す術もなく敗北してしまうでしょう。それは閣下の望むところではないと思いますが」
クロパチェクの言葉にパストーレはハッとした。
「そ、そうだな、君の言う通りだ。よし、全艦隊臨戦態勢を取れ、ドゥラクロワ准将の先頭集団は偵察機を発艦させて敵の位置を特定せよ」
パストーレの命令に幕僚たちは敬礼して答える。
「了解しました」
「それと、艦隊から足の速い巡航艦2,3隻ずつ抜き取って、第2、第6艦隊への連絡に回せ!」
「分かりました」
命令を受けた副官は早速行動に移るべく部屋を出て行った。
「さて、後は待つだけか……」
パストーレは椅子に腰掛けると机の上に肘を突き両手を組んだ。
「司令官閣下、お飲み物でもいかがですか?」
「ん?ああ、コーヒーを頼む」
クロパチェクはうなずくと、自分のコーヒーを用意しつつパストーレにもコーヒーを差し出す
。
「どうぞ、インスタントで申し訳ありませんが」
「いや、構わん」
クロパチェクは差し出されたカップを受け取ると、自分の席に戻り、何も入れていないブラックのそれを口へ運んだ。
「……」
「……」
沈黙が流れる。パストーレは組んだ手を見つめたまま微動だにしない。クロパチェクはその横顔を眺めながらパストーレが口を開くのを待った。
(さすがに緊張しているようだな)
そう思うとクロパチェクはパストーレの心中を思いやった。
(無理もない、この状況で平静を保てる方がどうかしている。俺だってこんな状況はそう遭遇したことも無い……)
ふと、クロパチュクは思った。自分とパストーレの違い。それは軍人としての経験の差である。士官学校を出たばかりの自分が、すでに30年近く軍に在籍し数々の修羅場をくぐってきたパストーレと同じような気持ちになるなどおこがましい事だった。
(いかんな、やはり俺はまだまだ未熟だ)
そう考
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