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俺様勇者と武闘家日記
第2部
スー
スー族の里を後にして
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渇きの壺は東の海の精霊により生み出されたアイテム。本来は精霊の加護のある場所に保管するべきなのだ」
 私たちにはよくわからない理屈だが、スー族の人たちにとっては当たり前の考えらしい。
「けどそこにはお前の兄しかいないんだろ? 逆にそんなところに置く方が危険なんじゃないのか?」
 ユウリが危惧しているのは、再びエジンベアが渇きの壺を求めてグレッグさんのいる場所まで来るかもしれないのではということだ。
「大丈夫。わしもグレッグも当時のことはよく覚えているからな。次は絶対に奪われないように誰にも見つからない場所に隠すはずだ。それに、今はユウリ殿たちが持っているということになっているのだろう? だったらエジンベアが再び襲うということはまずないだろう」
 確かに、アナックさんの言うとおりだ。そもそも、里に入るときにユウリはアナックさんと壺を返す約束をしているので、どちらにしろ返さなければならない。
「あんたかジョナスが兄のところまで行って直接壺を渡せばいいんじゃないのか?」
「東の地へは、人が行くには過酷すぎる。大山脈を越える以上に困難なのだ」 
「随分と都合のいい話だな」
「里の者が騒いでいたが、お前達は船でここまできたのだろう? 船なら大陸を迂回すれば東の地にたどり着くことが出来る。頼む、兄のところまで行ってはくれないか?」
「……」
 そこまで言われては、断る理由が見つからない。ユウリはしばし考えこんだ後、
「……わかった」
 アナックさんの説得に根負けしたのか、渋々承諾した。
「ありがとう!!」
「場所はどこだ?」
 アナックさんは、ユウリが鞄から取り出した世界地図を一瞥すると、すぐさま指で場所を示す。
「この里より東に広い平野があるだろう。その海岸沿いにかつてわしらの村があったんだ。兄のグレッグは今は一人でここに住んでいる」
 アナックさんが指差したのは、ここから山脈を挟んで東側にある土地だった。まだ行ったことのない場所なので詳細はわからないが、確かにとても歩いて行けるような距離ではない。
「急に俺たちみたいな見知らぬ人間がやってきても、受け入れてくれないんじゃないか?」
「心配せずとも大丈夫だ。実はわしらスー族は鳥を使って情報伝達をしておってな。まあ見ててくれ」
 アナックさんは指を口元に持っていくと、思いきり口笛を吹いた。すると、ピィィーーッ、と大きな音が鳴り、すぐに空から大きな鳥が飛んできてアナックさんの腕に止まった。
「この鳥の足に手紙をくくりつけて飛ばすのだ。例えば……」
 懐から一枚の大きな葉を取り出したアナックさんは、何やら暗号のように葉のあちこちに穴を空け始めた。この里には紙もペンもないので、葉に穴を空けることで文字の代わりにしているのだろう。
 そして一通り穴を空けると、くるくると巻いて藁で葉
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