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俺様勇者と武闘家日記
第2部
スー
スー族の里を後にして
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「世話になったな、ジョナス」
 山彦の笛を入手し、ルーラの呪文で一瞬にしてスーの里まで戻ってきた私たちは、アープの塔まで同行してもらったジョナスと別れの挨拶を交わした。
「ユウリたち、役に立てた、私も安心」
 実際ジョナスがいなければ、アープの塔にすらたどり着けず、山彦の笛は手に入らなかっただろう。彼には感謝の気持ちしかない。
「ありがとう、ジョナス。奥さんと娘さんにもよろしくね」
 私はジョナスにお礼を言うと、ジョナスは私の手を取りぶんぶんと上下に激しく振った。
「ミオ、魔物倒す、とても強い。ルカも小さいけど、魔物倒す。皆、スー族の戦士と同じ。だから、皆歓迎する」
 それって、ユウリと同じように私やルカもスー族の人たちに強さを認められたってことなのかな?
 人に認められるのって、なんだか嬉しい。
「ルカも強いんだって。よかったね」
「あ、ああ、まあな」
 照れているところを見ると、ルカもまんざらではないみたいだ。
「それじゃ、俺たちはここを出る。用事が済んだらまた壺を返しにここに戻ってくる。酋長にもよろしく伝えてくれ」
「わかった。ユウリ達、旅の無事、祈る」
 そう言ってジョナスと別れ、スーの里を後にしようとしたときだった。里の方から、たった今話に出ていた当人らしき声が、こちらに向かって呼び掛けているではないか。
「おーい!! 待ってくれ、ユウリ殿!!」
 やってきたのはやはりアナックさんだった。私たちの姿を見かけて慌ててやってきたのか、私たちの元に到着したとたん呼吸を整えると、何か言いたそうにユウリを見た。
「どうかしたのか?」
「実は、この前の渇きの壺のことで、言い忘れていたことがあってな。もともとスー族の里と渇きの壺はここではなく、山脈を越えた東の地にあったんだ」
 アナックさんによると、何十年か前、もともとあったスー族の村はエジンベアに侵略された。それは以前エジンベアの国王様が話していた、渇きの壺を手に入れるための行動によるものである。
 結果エジンベアは渇きの壺を奪い、スー族は彼らの宝である渇きの壺を奪われ、さらに村を滅ぼされた。
 生き残ったスー族の人たちは、再び他国の人間に侵略されるのを恐れ、別の場所に自分達の里を作ることにしたのだそうだ。それがこの場所である。
「それと渇きの壺と、何の関係があるんだ?」
「かつて村があった東の地に、わしの兄のグレッグがそこに住んでいる。あいつは再びスー族の村を新しく作ろうとしているらしいのだ」
「随分壮大な野望を持っているな、あんたの兄は」
「そこで、渇きの壺をもともとあった東の地に戻すため、兄のところまで行って壺を渡してほしいのだ」
「は?」
 アナックさんの突然の頼み事に、ユウリは苦い顔をした。面倒事は極力避けたいのが彼のポリシーだからだ。

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