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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第66話 用意周到 本末転倒
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隠れている白兵戦部隊とガスで強制的に無力化する予定だった。

 救援艦隊が玉砕することで帝国軍将兵の心を折り、三〇隻対三〇〇〇隻で完全包囲することで抵抗の気力を失わせる。そういうシナリオだったのだが、レッペンシュテット准将が早々に降伏と投降を決断し、三〇隻に分乗した帝国軍将兵に事態の説明を行ったので、それが全部無駄になった。
 フィンク中佐によると准将の放送を聞いた後で抵抗しようとした将兵もいないわけではなかったらしいが、圧倒的多数の賛同者による封じ込めと寿司詰め状態の艦内環境のおかげで、殆ど鎮圧できたとのこと。

「これは期待した通りの結果かね?」

 レッペンシュテット准将とその副官と共に、シャトルで旗艦エル・トレメンドに移乗した俺は、司令官公室で准将からの降伏を受けた後の爺様から、皮肉の一撃を受ける羽目になった。

 結果としてディディエ少将以下の地上軍は、一兵も損ねることなく、しかも殆ど無傷で惑星エル・ファシルを奪回することに成功した。一方で爺様の宇宙艦隊は、偽装艦隊やら敵役やら、囮の準備に実弾演習までやらされた。
 こちらも将兵に損害はなかったものの、あくまでも功績は作戦指揮官のディディエ少将。自分の部下であるはずの俺がそれに一応貢献したということになるから、爺様も軽く皮肉の一つも言いたくなったのだろう。別に本気で怒っているわけではない。はぁ、まぁ、と俺が苦笑して頭を掻けば、爺様も仕方のない奴めと言わんばかりに口をへの字にして肩を竦める。

「で、貴官がお芝居をしている間に、また地上軍側から変な要請が来ているわけじゃが、ジュニア。これも貴官の入れ知恵ではないだろうな?」

 そう言って爺様がピラピラと机の上で揺らす紙は、レッペンシュテット准将を引き取りに来たジャワフ少佐がついでのように爺様に手渡したもの。ファイフェルを中継して俺に手渡された書類には、ディディエ少将名義でミサイル兵器を取り外した残存する帝国軍艦艇を一六隻、大気圏突入が可能なものを地上軍に譲渡して欲しいと書いてある。

「……一体何に使うんでしょうか」
「なんじゃ、ジュニアも聞いてないのか?」
「はい。地上における捕虜収容所として使う、くらいしか考えられませんが」

 だとしても一六隻は多すぎる。巨大な航行用エンジンも艦砲も重力装置も収容所には不要だから、取り外してしまえばかなりのスペースが利用できるはずだ。無駄に航行能力と戦闘能力を残して置けば、一度降伏した帝国軍の中にも『余計なこと』を考える輩も出てくる。
 そんなことぐらいはディディエ少将もジャワフ少佐も分かっているだろう。爺様もファイフェルも、勿論俺もそう考えているから余計に疑問が生じる。

「譲渡する以上、廃材処分費は負担しない。それが条件だとディディエに伝えてくれんかの」
「承
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