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農夫の力
第三章
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「その力はな」
「ロシアの大地を持ち上げる」
「それ位のものでないとだ」
 とても、そうした口調での言葉だった。
「出来ない、事実そなたの畑仕事に橋や堤を築く仕事がないとこの村はどうなる」
「困ります」
 ミクーラは一言で答えた。
「これでも頼りにしてもらっています」
「村人達にだな」
「有り難いことに」
「そうした仕事を村から奪う訳にはいかない」
 決してというのだ。
「そうなればこの村は困るからな」
「だからですか」
「そなたはこれからもだ」
「この力をですか」
「畑仕事等に使ってくれるか」
「はい、実はおらもです」
 ミクーラは左手を自分の頭の後ろにやって少し背中を屈めさせて答えた。
「兵になるよりも」
「村にいたいな」
「畑仕事も他の仕事も好きですし」
 村のそれがというのだ。
「村の皆から感謝もされてますし」
「村にいたいな」
「はい、ずっと」
 そうだというのだ。
「ですから」
「それでだな」
「はい、これからも」
 スウャドゴルに答えた。
「そうしたいです」
「そうだな、ならだ」
「これからもですか」
「村の為に働いてくれ」
 その力を使ってというのだ。
「いいな」
「わかりました」
「ではわしは砦に戻る」
 自分が守り居にしているそこにというのだ。
「何かあれば言ってくれ」
「戦ってくれますか」
「獣からも敵の軍からもな、わしの力はその為にあるからな」
 ミクーラに笑って答えた。
「そうしてくれ」
「わかりました」
 ミクーラは素朴な声で答えた、そうしてだった。
 スウャトゴルはミクーラに別れを告げて兵達を連れて砦に戻った、そして砦で兵達と共に夕食を喰い酒を飲みつつ話した。
「戦にも力は必要だ、しかしな」
「ロシアを支え豊かにするにはですね」
「より大きな力が必要ですね」
「大地を持ち上げられるだけの力が」
「そうなのですね」
「そうだ、だからあの男はそれだけの力を授かった」
 ミクーラ、彼はというのだ。
「神からな」
「そしてその力を使っている」
「左様ですね」
「あの者は」
「そうだ、わしもこのことがわかった」 
 ミクーラと会ってというのだ。
「あの時にな」
「戦にも力は必要ですがロシアを支え豊かにするには」
「より大きな力が必要ですか」
「そうなのですね」
「そういうことだ、これからもロシアにはそうした力が必要だ」
 ミクーラの様なそれがとだ、こう言ってだった。
 スウャトゴルは夕食を食べ酒を飲んだ、それからも彼はその力に誇りを持っていた。だが常にこう言っていた。ロシアを支え豊かにするには大地を支えるだけの力が必要でありその力こそが最も尊いのだと。ロシアに古くから伝わる話である。


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