第120話『雨男』
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知られているとはいえ、これがなければ彼の足元にも及ばない。できれば"疾風の加護"の方が良いのだが、今の残り魔力ではそれは厳しそうだった。
だからその分、攻撃に魔力を乗せて──!
「"烈風拳"!」
「まぁ、お前の攻撃なんて当たらな──」
「ふっ!」
「何っ!?」
拳が雨男を捉え、突風で吹き飛ばす。ガードこそ間に合っていたが、初めて彼に一撃を与えることができた。
「……ふ、はは。まさか避けた先に拳が飛んでくるとは。いい勘してるよお前」
勘、ではなく本当は予知なのだが、あえて教える理由はない。いくら彼の回避能力が高くとも、この力ならば渡り合える。
「面白くなってきた」
雨男はニヤリと笑うと、一気に距離を詰めて晴登に襲いかかった。
「そらっ!」
「ふっ!」
顔面を狙う右手を払い、晴登はお返しに拳を放つ。だがそれは見事にかわされ、逆に横腹に蹴りを入れられた。
体勢を崩されるも、それは片脚を上げた相手も同じこと。晴登は痛みを堪えて相手の脚を腕でがっちりと固定し、残った左手を雨男に向ける。
「"天翔波"!」
至近距離での烈風。避けることが許されない雨男は両腕を交差させて風を受けるが、防ぎ切れずに彼のフードがふわりと捲れそうになる。
正体不明の少年。晴登と年齢はそう変わらないであろう彼が、どうしてテロリストの親玉をやっていて、どうして旧魔術師とやらを殲滅しないといけないのか。訊きたいことは色々あるが、それには目と目を合わせて話すのが筋ってもの。
そのためには、彼の顔を覆うフードが邪魔だった。これでようやくその素顔がようやく露わになって──
「……悪いな、顔を見られる訳にはいかないんだ」
フードが目元まで捲れ上がり、一瞬だけ彼と目が合ったが、不思議なことにそれ以上フードが捲れることはなかった。
予知でもそれ以上は視えず、そして物理法則を無視した現象を目の当たりにして戸惑った瞬間、雨男が向けた掌から高圧の水弾が射出される。
「うあっ!!」
思考の整理がつかないまま、晴登はその水弾に直撃し、壁まで吹き飛ばされてしまう。
「な、んで……」
「種明かしをするつもりはないぜ。自分で考えるんだな」
そう言って、フードの下で彼は笑う。あのフード自体に仕掛けがある……とは、正直考えにくい。だってメリットがないから。
つまり、さっきの現象も彼の能力のせいということになる。しかし風でフードが脱げないなんて、水の魔術で起こる現象ではない。そうなると、水属性だけじゃなくて複数の属性を持つ能力で──
「くそ、頭が回らない……」
治癒魔術と戦
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