六十 雨夜の月
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手はフェイクで、本命はナルトの足元の地面まで掘り進めていたらしい。
地中から突如飛び出した角都の手がナルトの足首を握ったかと思えば、ぶおんっと勢いよく振り回した。
当然、足首を掴まれているナルトも空中で勢いよく振り回される。
打撃を与える為に荒野から森へと移動した角都が、大木や岩へ強かにナルトを叩きつけた。
普通の人間ならば頭蓋骨に罅が入り全身の骨も粉々に砕かれているだろう。
好き勝手に振り回されるも何もしないナルトを見て、白ゼツは「なんだ」と拍子抜けしたかのように肩を竦めた。
「防戦一方じゃないか」
「……ヨクミロ」
黒ゼツに促され、白ゼツは角都の触手に囚われたナルトへ視線をやった。
空高く大きく振り回されたナルトが勢いよく地面へ激突する。
潰れた蛙のように無惨な姿へ変わるほどの凄まじい速度と回転率。
角都の【地怨虞】の触手が逃がすまいと厳重に縛り付けているその身体が地面に触れた瞬間、ぶわりと狂い咲いた。戦況を見守っていた白ゼツの口から声が無意識に漏れる。
「えっ」
地面へ激突するはずのナルトの身体。
それが地面へ触れた箇所から徐々に、ぶわりと黒と白の蝶へと変貌してゆく。
いや、最初から本物ではなかった。
素っ頓狂な声をあげる白ゼツの視線の先で、黒白の蝶が厳重な捕縛をあっさり抜け出る。
角都の【地怨虞】の触手から逃れた蝶の向こう側で、つい先ほどまでいなかったナルト本人の姿が視界に映った。
「ゲンジュツダ…」
「い、いつから…?」
「……サテナ…」
黒ゼツの指摘通り、幻術でナルトに見せかけていた黒と白の蝶が豪雨にも負けず、ひらひらと宙を舞う。
蝶ではなく花弁で生み出されたその蝶は、角都を煽るように彼の周りを踊った。
角都が振り回したのではなく、ナルトの幻術に彼こそが振り回されていたのだ。
本物のナルトは何もせず、静かに佇んでいる。
幻術で自身に見せかけていた黒白の蝶がナルトにまとわりつく。
雨夜に飛び交う黒白の蝶は幻想的な光景だ。
此処が殺気溢れる緊迫めいた戦場でなければ。
ふ、と再不斬と共にいるはずの己の影分身が消え、チャクラが還元されたのを見て取ったナルトは、口許に笑みを湛えた。
その微笑みを挑発と捉えたのか。
それとも隙と考えたのか。
なりふり構わず攻撃を仕掛けてくる角都。
森の深部へナルトを追い込む角都を追い駆けて、自らも観察していた白ゼツは「…コレ、追い込まれていないかな」と疑問を口にした。
案の定、地面が急に途切れる。
崖がナルトの背に広がる一方、追い込んだとばかりに角都の【地怨虞】の術が炸裂した。
再び押し寄せる黒い波。
今度は黒と白の蝶などで
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