六十 雨夜の月
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わざとシカマルを茶化す。
「俺が死んでる間にナルと進展でもあったか?シカマル」
呆然としているシカマルの横で、逸早く我に返った紅が「…このデリカシーの無さは本物だわ…」と溜息をつく。
茫然自失としながらも揶揄を受けたシカマルの脳裏に、一瞬、師の死に沈んでいた自分と背中合わせになったナルの姿が自然と浮かんだ。
自分の弱気な姿を受けとめてくれたナルの快活な笑顔を無意識に思い浮かべる。進展なんてものはない。
けれどナルのおかげで心が軽くなったのは確かだ。
おかげで取り逃がすという残念な結果に終わってしまったものの、飛段との決着をつける覚悟ができたのだから。
「…べつに何もねぇよ。あったとしてもアンタにはぜってー教えねぇ」
思い悩んでいた自分が馬鹿らしく、更に墓石の前で恥ずかしい台詞を吐いてしまった自分が居た堪れなくて、シカマルはぶっきらぼうに悪態をついた。普段から目つきが悪いと評判の双眸を、より一層険しくさせる。
そうして半目になると、命令口調で言いつけた。
「…とりあえずアンタは詫びとして、紅先生とチョウジといのに焼肉奢れ」
「ナルと俺にもな、」と付け加え、伏せていた顔をあげる。
夕焼けを背に笑う死者。
いや、生きている師を恨めしげに「あとで徹底的に将棋で負かしてやる」と睨む。
しかしながら、その目尻には光るものがあった。
沈みゆく太陽。
夕映えに染まる笑顔が眩しい。
再会を祝福するかのように木の葉がざあっと舞い上がった。
死んだはずの男────猿飛アスマの帰還を。
「…なにも憶えていないと?」
「ええ」
五代目火影たる綱手の問いに、シズネは釈然としない面持ちで答えた。
春野サクラが木ノ葉の里にアスマ上忍を連れ帰ってきた事自体は実に喜ばしい。
死んだはずの男が帰ってきたのだ。
けれど敵の罠という可能性もありえる。
『暁』により操られている危惧も、敵がアスマに化けているという可能性も無きにしも非ず。
そこで念入りに調べて、精神エネルギーを操る山中一族によりアスマの心を覗いたりしたものの、これといった情報は掴めず。
アスマ自身にも特に妙な様子は見られなかった。
シカマル達からの報告による詳しい情報と照らし合わせても、アスマ本人曰く、『暁』の連中と闘ったところまで憶えてはいるが、そこからの記憶は曖昧らしい。
アスマ死亡の瞬間を目撃したシカマル達からの報告によれば、アスマは飛段の呪いで奮闘むなしく命を落とした。
桃地再不斬という思わぬ乱入者により全滅は免れ、加勢にきたカカシと
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