見滝原南の医者
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ーリナーは制服姿のまま、どこからともなく銃を取り出した。彼女はそれを自らのこめかみに当て、口をさらに大きく歪ませた。
「今、ここで、やり合うのがご所望で?」
「やめなさい」
だがそれは、医者の一言で遮られる。
フォーリナーの動きを止めた医者は、「やれやれ」と煙草を取り出した。
あまり見かけない銘柄のそれにライターを付け、医者は静かに吹かす。
「君のさきほどの質問だが……私は彼女の傷を治療する依頼を受けた」
ふうっ、と煙草の煙を吐きながら、医者は答えた。昇っていく煙を見送りながら、医者はフォーリナーへ尋ねた。
「彼女の容体は?」
「ええ。ええ。もう痛みも退いたそうですわ。で・も? 麻酔もなしに手術を行うとは、中々にえげつないですわね」
「この見滝原南の地に麻酔はない。だが、私の手にかかれば確実に治療できる」
「ええ。ええ。でも、マスターも大分おかしくなりましたわ。戯言ばかりいうようになりましたわ」
「ずれそれも元に戻る。安心しなさい、時崎狂三」
時崎狂三。
それが、フォーリナーの真名。
一人、息を深く吸い込み、ハルトはその名前を脳裏に刻み込んだ。
ハルトは立ち上る。
「顔が治ったなら、もう見滝原に戻ればいいじゃないか。それこそ、モデルの仕事でもなんでも戻ればいい。何も無理に聖杯戦争を続けるつもりなんて……」
「忘れましたのウィザード?」
ハルトへ、フォーリナーこと狂三が顔を近づける。
口を大きく歪めた彼女の笑い声は、またしてもハルトと、隣の響に強く届いた。
「彼女の願いは、氷川日菜の破滅。聖杯戦争に参加している限り、彼女を見滝原に戻すのは危険では?」
「それは……っ!」
ハルトは言葉に詰まる。
すでに狂三は、ハルトから隣の響へ視線を移している。彼女は響を品定めするように睨み、やがて「きひひっ!」と笑みを浮かべる。
「初めまして、ランサー。フォーリナーのサーヴァント。時崎狂三と申しますわ。どうぞお見知りおきを。お医者様に免じて、この場は見逃してあげますわ」
「……あなたも参加者なんだよね?」
狂三へ、響は問いかけた。
あっさりと、狂三は「ええ」とその事実を認めた。
響は続ける。
「だったら、その願いはなんなの? もしかしたら、わたしたち、手を取り合えるかもしれないよ? こんな戦いを続けなくても、きっと願いだってかなえられるよッ!」
「……幸せ者ですわね。ランサー」
狂三は目を細める。
彼女の眼差しは、みるみるうちに冷めていった。
「この世界ではどうしても叶わない願い……と言っても?」
「え」
ハルトは言葉を失った。
狂三は続ける。
「ええ。ええ
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