第一章
[2]次話
悪人が飼い主だった悲劇
その話を聞いてだ、アメリカカルフォルニア州サンベルナティーノ市の動物保護シェルターに勤務しているホセ=マルゴーゾは眉を顰めさせた。一七五程の背で縮れた黒髪と亜策黒い肌を持つ明るい顔立ちの青年である。
「あの、その飼い主は」
「酷いわね」
「休暇貰って旅行を楽しんで」
そしてというのだ。
「ここに復帰していきなりですか」
「酷い話を聞いたわね」
「ええ、この子ですね」
「クォン・・・・・・」
マルゴーゾは一匹のコッカースパニエルの雄を見た、見れば打ちひしがれた感じでとても悲しそうだ。
「クッキーっていうのですね」
「そうよ」
職場の先輩でありリン=ハミルトン短いブロンドの髪とブルーグレーの目を持つ長身の彼女はマルゴーゾに答えた。
「診察したら腫瘍が十二もあったわ」
「年取って病気だからですか」
「もう一匹の一歳のラブラドールの子だけ引き取って」
「迷子になっていた二匹のうちの」
「ミッキーっていったけれど」
「若いその子だけ引き取って」
「それでよ」
そのうえでというのだ。
「この子はね」
「いらない、だったんですね」
「そうだったのよ」
「とんでもない飼い主ですね」
「それで所長さんがお話したけれど」
ハミルトンはマルゴーゾにあらためて話した。
「この子は治療をして愛護ボランティアの団体にね」
「そこにですか」
「預けようってね」
「お話してるんですね」
「そうなの、もう一匹だけ連れ帰る飼い主の人にすがる様に鳴いていてね」
「それで置いていかれて」
「凄く悲しそうだったから」
だからだというのだ。
「これ以上悲しい目に遭わせない為にね」
「里親を探さないで」
「所長さんの知り合いの」
その団体にというのだ。
「預けるわ」
「そしてこれからは」
「幸せに過ごしてもらうわ」
「腫瘍の治療の後で」
「そうしてもるわ」
こうマルゴーゾに話した、そしてだった。
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