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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第65話 提督、万歳! 
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抗演習)」
「イエロー、確認良し」
「艦統制シミュレーター」
「正常に作動しております」
「敵味方識別信号」
「当艦グリーン(味方)、他艦イエロー(可動戦闘標的)」

 選抜されたオペレーター達は、帝国語で俺の指示に応える。実のところ爺様には無理を言ってこの艦に追加で三〇人もの航法オペレーターを乗せてもらった。これは俺がいちいち艦艇の戦闘操作をするのが無理な為、オペレーター一人で八隻を運用する戦隊指揮官になってもらい、より現実的な艦隊運用を期待しているためだ。
ちなみにオペレーターを引き抜かれた先である第五四四独立機動部隊のメンディエタ准将からは『無様な負け方だけはしてくれるな』と念押しされているらしく、オペレーター諸士の士気は妙に高い。

「『敵』は台形陣を形成。惑星エル=ファシル公転軸N方向、当艦隊より方位〇時三〇分」
「距離六・二光秒、速度0.003光速。第二戦闘速度で接近」
「有効射程迄あと二〇秒、やりますか『提督』」

 サンテソン少佐の呼びかけに、俺は黙って艦橋内部を見回した。前の所有者が貴族であったらしく、同盟標準の無粋な雛壇艦橋とは違って、小広く落ち着いた夜景サロンのような空間だ。座っている艦長席も本革製でしっとりとした座り心地。そしてここには殺人ワイヤーはないが……繊細な装飾が施された見事な柱が並んでいる。

 黙っている俺にサンテソン少佐の丸い瞳が向けられている。俺の目では確認できないが、他のオペレーター達のも同様だろう。この世界にきて、『戦隊』の指揮はマーロヴィアでとったが、『艦隊』の指揮を執るのは初めてだ。それが何の因果か、あんなに毛嫌いしていた帝国軍の軍服に身を包んで、無人とはいえ帝国艦隊の指揮を執ることになろうとは。

「よかろう」
 俺は艦長席から立ち上がると、創られた帝国騎士、ジークフリート=フォン=ボーデヴィヒ准将になり切って、彼らの視線に応えた。
「我に逆らう叛徒共に、正義の鉄槌を喰らわせろ。皇帝陛下万歳! 帝国万歳! 砲撃はじめ!」

「「帝国万歳!」」

 俺もサンテソン少佐も、そしてオペレーター達も、人生でもう二度と叫ぶことのない呼応に、僅かな戸惑いを覚えつつも笑い声をあげるのだった。


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