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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第65話 提督、万歳! 
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〇隻だ。だが全部を地上降下させることは出来ない」

 大気圏降下中の艦艇は攻撃も防御もできない。ある程度の犠牲を覚悟の上で、警戒中の叛乱(同盟)軍を蹴散らして時間と空間を稼ぐ必要がある。何しろ一度一〇〇〇隻もの『陽動』艦隊が動いているのだ。

「陽動艦隊が徒になりましたな」
「アレを用意したのはブラウン……いや何でもない」
「聞かなかったことにいたします。他ならぬ、高貴な方の為に」

 苦笑するレッペンシュテット准将に、僅かながらも胸が痛む。情報将校には精神的に向いていないとバグダッシュは言っていたが、アイツの人物鑑識眼もなかなかと言わざるを得ない。

「時刻は四日後。二〇日午後一〇時より降下を開始。場所は前回と同じ平原だ。降下する艦艇は戦艦四隻、巡航艦二六隻。降下配置は圧縮通信で送る。地上投錨待機が許されるのは二一日〇一〇〇時より二時間。武器弾薬装備一切は持ち込まずともよい。個人装備のブラスターもいらん」
「装備品の敵地放棄はあとで問題になりませんか?」
「二万人を死体にしてくれるなら、装備品も積み込んでもよいぞ」
「もう三〇隻着陸降下させることは出来ませんか」
「地上軍の装備如きの為に、宇宙艦隊がこれ以上犠牲になってもいいと貴様はいうのか?」
「……承知しました」
「よろしい。速やかに準備を進めよ」

 俺はそう言い切ると超光速通信の電源を落とした。真っ暗になる画面の先にいたレッペンシュテット准将はどう考えるだろうか。余計なことをしゃべったつもりはないが、心配ではある。帝国軍の軍服の上から胃を摩ると、不意に端末が振動した。ユタン少佐からの連絡だろう。

「『援軍到着。現在二三隻』、か」

 俺は大きく溜息をついて、帝国用の超光速通信室を出るのだった。





 五月一九日一〇〇〇時。鹵獲戦艦トレンデルベルクに移乗した俺は、エル=ファシルXの惑星内に隠れている全ての帝国艦艇に出動を命じた。艦艇三〇五隻の内、有人艦艇は三一隻。探知妨害装置を作動させつつわき目も振らず一気に惑星エル=ファシルに向かって最適航路を突き進む。

 二時間後、航路途中で無人艦三〇隻を分離。搭載している囮を発射し、三〇〇〇隻の艦隊を出現させる。これらは索敵に出てきた味方部隊に撃破されるまで、自動制御でゆっくりと前進を続ける。これで少なくとも独立部隊の一つを足止めできる。

 すでにアップルトン准将もビュコック爺さんへのリターンマッチに動いているだろうから、防衛艦隊の主力である第四四高速機動集団はこちらに回ってはこない。第四四高速機動集団の致命的な欠点は、編成されたばかりの艦隊で練度が不足していることではない。基礎的な砲撃能力だけとってみれば、エレシュキガルで猛訓練を行った甲斐もあって決して正規艦隊に劣るものではない。訓
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