第一章
[2]次話
雄の老猫が得た幸せ
その保護猫カフェにいるゆうさくという名前の白と黒の八割れの雄猫はもう十三歳になる、その猫を見てだった。
客の一人は店長の堀達男眼鏡をかけて大柄で黒髪を清潔に整えていて店のエプロンを着けている彼に尋ねた。
「この子ずっといるよな」
「うちの最古参ですよ」
店長は客に話した。
「お店をはじめた時からです」
「いるんだな」
「ですから五年ですね」
「長いな」
「その時八歳で」
店の猫用のタワーの最上階で寝ている彼を見つつ話した。
「前はお婆さんに飼われていたんですが」
「そのお婆さんがなんだ」
「はい、お亡くなりになって」
そうなってというのだ。
「そしてです」
「飼い主がいなくなって」
「お婆さんの親戚は誰も飼える状況になくて」
それでというのだ。
「ボランティアの保護団体に預けられて」
「そうしてこのお店に来たのかい」
「はい」
そうだというのだ。
「それで五年になります」
「飼い主さんが亡くなったか」
「ええ、ただ親戚の人が皆心ある人でよかったです」
「酷い連中だと捨てたり保健所送りだからな」
「そうしますからね」
「次の飼い主さんを探してもらう為にボランティアの人達に預けたからな」
「それで今ここにいますから」
「良心的だな、しかし五年か」
客は猫特有の威張った感じでくつろいでいるゆうさくを見つつ話した。
「長いな」
「ええ、どんどん他の猫が来てです」
「貰われていったんだな」
「そうです、若しかしたらここにです」
「死ぬまでいるかも知れないか」
「それもいいかも知れないですね」
店長は客に笑って話した。
「本当に」
「うちも一匹貰ったがな」
「ゆきおでしたね」
「白の雄のな。今も元気だよ」
客はこの店で迎えた家族のことも話した。
「というか元気過ぎるな」
「あの子はうちにいた時からそうでしたからね」
「悪戯ばかりしてな。けれどな」
「そのやんちゃさがですね」
「いいんだよな、猫は」
注文したコーヒーを飲みながら話した、そしてだった。
またゆうさくを見た、彼は相変わらずそこにいてだった。
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