暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
ソ連の長い手
ミンスクハイヴ攻略 その4
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
この勝負受けられい」
背後より抜き出した長刀を、勢いよく振りかぶる
 咄嗟に、右腕にマウントした短剣を左手で抜き取り、剣を弾く
強化炭素複合材(スーパーカーボン)製の刃がぶつかり、火花が舞う
鈍い音が、闇夜の海岸に木霊(こだま)する
「その訛り……、カフカス人だな」
黒染めのソ連機に乗る男は、苦笑する
野蛮人(ニメーツ)の割には、生きの良い標準語を話すな」
野蛮人(ニメーツ)
 (おぞ)ましい表現で、ドイツ人を罵る
ニメーツ("немец")とはドイツ人一般を指し示す言葉である
(おし)を意味する二モーイ("немой")が語源
元来は露語を介さない外人一般を指示していた
 侮辱を込めて、彼を煽ったのだ
彼は、冷笑を漏らした後、呟く
「プーシキンの名高い詩に書かれたカフカス人が、未開人(スキタイ)の後塵を拝するとは……。
そんな情けない格好、恥ずかしいとは思わないのかい」
男は怒りに身を震わせ、操縦桿を力強く握りしめる
「減らず口を叩くとは……」
噴射を掛けると、勢い良く切り込んでくる
野人(ニメーツキ)め、刀の錆にしてくれるわ」
黒色の機体は、勢いよく長刀を振り下ろす
幅広の77式近接戦用長刀と呼ばれる重量のある刀剣……
当たれば、重装甲のファントムとも言えど無傷では済まない
 ヤウクは操縦桿を握り、背後の推進装置を逆転させる
難なく避けると、横から()ぐようにして右手に持った長刀を切り込む
黒鉄色のMIG-21を左腕の関節事、胴を切りつける
その動作と並行して、逆噴射を掛ける
右の肩間接に短刀を差し込み、其の儘後退
長刀ごと、機体を突き放す
 一瞬体勢を崩して、捨て置かれたソ連機の突撃砲を拾う
噴出(ブースト)を掛け、起き上がる
姿勢を直すと同時に、突撃砲の下部に搭載された105o滑腔砲を連射
これでもかと言わんばかりに、止めの一撃を与える
爆散する機体を尻目に、その場を後にした


「同志大佐……、同志大尉が撃墜されました」
ユルゲンと対峙し続けた大佐の下に通信が入る
「何!」
一瞬の隙をついて、朱色の機体が持つ突撃砲が火を噴く
105o滑腔砲から、放たれる砲弾
弾頭から、複数の破片が飛び散る
散弾(キャニスター)だと……」
空いている左手で、管制ユニットを覆う
その瞬間、長刀が振り下ろされる
頭部から管制ユニットに目掛けて縦に切り裂くように、長刀を一閃(いっせん)する
 ユルゲンは、(たかむら)達の演武から唐竹割りを模倣した
機体を「一本の刀」に見立てている、示現流(じげんりゅう)の技法
フェンシングの名人であるヤウク少尉との、血の(にじ)む様な訓練
(ようや)く、ここに身を結んだのだ
長刀を背面の兵装担架に収納すると、噴出を掛け
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ