第二部 1978年
ソ連の長い手
ミンスクハイヴ攻略 その4
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この勝負受けられい」
背後より抜き出した長刀を、勢いよく振りかぶる
咄嗟に、右腕にマウントした短剣を左手で抜き取り、剣を弾く
強化炭素複合材製の刃がぶつかり、火花が舞う
鈍い音が、闇夜の海岸に木霊する
「その訛り……、カフカス人だな」
黒染めのソ連機に乗る男は、苦笑する
「野蛮人の割には、生きの良い標準語を話すな」
野蛮人
悍ましい表現で、ドイツ人を罵る
ニメーツ("немец")とはドイツ人一般を指し示す言葉である
唖を意味する二モーイ("немой")が語源
元来は露語を介さない外人一般を指示していた
侮辱を込めて、彼を煽ったのだ
彼は、冷笑を漏らした後、呟く
「プーシキンの名高い詩に書かれたカフカス人が、未開人の後塵を拝するとは……。
そんな情けない格好、恥ずかしいとは思わないのかい」
男は怒りに身を震わせ、操縦桿を力強く握りしめる
「減らず口を叩くとは……」
噴射を掛けると、勢い良く切り込んでくる
「野人め、刀の錆にしてくれるわ」
黒色の機体は、勢いよく長刀を振り下ろす
幅広の77式近接戦用長刀と呼ばれる重量のある刀剣……
当たれば、重装甲のファントムとも言えど無傷では済まない
ヤウクは操縦桿を握り、背後の推進装置を逆転させる
難なく避けると、横から薙ぐようにして右手に持った長刀を切り込む
黒鉄色のMIG-21を左腕の関節事、胴を切りつける
その動作と並行して、逆噴射を掛ける
右の肩間接に短刀を差し込み、其の儘後退
長刀ごと、機体を突き放す
一瞬体勢を崩して、捨て置かれたソ連機の突撃砲を拾う
噴出を掛け、起き上がる
姿勢を直すと同時に、突撃砲の下部に搭載された105o滑腔砲を連射
これでもかと言わんばかりに、止めの一撃を与える
爆散する機体を尻目に、その場を後にした
「同志大佐……、同志大尉が撃墜されました」
ユルゲンと対峙し続けた大佐の下に通信が入る
「何!」
一瞬の隙をついて、朱色の機体が持つ突撃砲が火を噴く
105o滑腔砲から、放たれる砲弾
弾頭から、複数の破片が飛び散る
「散弾だと……」
空いている左手で、管制ユニットを覆う
その瞬間、長刀が振り下ろされる
頭部から管制ユニットに目掛けて縦に切り裂くように、長刀を一閃する
ユルゲンは、篁達の演武から唐竹割りを模倣した
機体を「一本の刀」に見立てている、示現流の技法
フェンシングの名人であるヤウク少尉との、血の滲む様な訓練
漸く、ここに身を結んだのだ
長刀を背面の兵装担架に収納すると、噴出を掛け
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