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冥王来訪
第二部 1978年
ソ連の長い手
ミンスクハイヴ攻略 その4
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下手をすれば、今頃は刑場の露と消えていた可能性も否定できない……
 折角(せっかく)繋いだ命だ……、存分に使わさせてもらおう
背広を着ると、机の上に有るホンブルグ帽を手に取った


 護衛が公用車のドアを開ける
男は、ふと尋ねた
「どこの部隊を出した」
「第3防空師団と第一戦車軍団だそうです」
 第3防空師団
バルト海に近い北部ノイブランデンブルク近郊のトロレンハーゲン空港に本部を置く部隊
BETA戦以降は解散の手続きが進められていたが、空軍の反対で沙汰止(さたや)みになっていた
「そうか……、ご苦労であった」
そう言うとドアを閉め、車に乗り込む
後部座席の背凭れに腰かけると、車は深夜の町へゆっくり走りだした


東ドイツ ヴァンペン・シュトランド近郊

 洋上に向け、ミサイルや砲弾が雨霰(あめあられ)と降り注ぐ
護衛に飛んでいたヘリの尾翼にミサイルが命中した
煙を出しながら、海面に急降下していく
「護衛のヘリが……」
ミサイル攻撃を防ぐため、急遽タンカーに艦載されたヘリを飛ばしたのだ
フレアを撒けば、ミサイル攻撃は攪乱出来る
そう考えての対応だった
「有りっ丈の弾をばら撒け、3万発あるんだ。気にせず使え」
 大佐の(げき)が飛ぶ
直後、僚機がミサイル攻撃を受けた
推進装置に直撃した機体は黒煙を上げると急降下してゆく
 音速に近い速度を出せる戦術機は、攻撃を受けると航空機より弱かった
元々、宇宙区間での作業用装置が起源……
月面での対BETA戦闘で用いられたものを地上に持ち込んだ

 猛烈な対空砲火で次々と落とされる機体……
ミサイル対策として電子戦装備がなかったの不味かった
KGB大佐はそう考えるも、両手に構える突撃砲を乱射した
携行性を重視して、短砲身の突撃砲は命中精度が戦闘機搭載の機銃より数段劣った
無薬莢弾薬(ケースレスカートリッジ)の20ミリ機関砲
湿気に弱く、暴発事故も多い……
 他方、シルカの対空機関砲は23x152ミリでガス圧作動方式
信頼性も高く、光学標準機を付ければ精密射撃も可能
毎分2000発の弾丸が、隙間の無い槍衾(やりぶすま)の様に彼等を襲う
戦闘機と違い、前面投影面積の高い戦術機は格好の標的であった

「何機、残っている」
大佐は、僚機に尋ねた
「1、2、1、2、……」
男はしばらく数えた後、答えた
「36機ほどです」
「半数も食われただと……」
 KGBの任務は、防諜
暗殺や破壊工作、国内の治安維持
非武装の市民の鎮圧などを請け負ったが、正規軍との戦闘経験が無い事が裏目に出る
時折、督戦隊(とくせんたい)として戦場から逃げ出す衛士や戦術機を粛清した
其れとて、稀な事であった
大部分は混乱の内にBETAの餌食(えじき)
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