第2部
スー
アープの塔
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壁みたいだな」
なんて答えが返ってきた。そしてユウリは、中央にある本棚をぐるりと見回して、あることに気づく。
「この本棚の壁の向こうに、部屋のような空間があるんじゃないか?」
「部屋?」
確かに、よく見たら部屋の中央が本棚の壁で囲うようになっており、その向こうに人一人入れるくらいの小さな空間ができているようだ。だが問題は、入口らしきものがないことである。
「この本棚のどこかに隠し部屋のスイッチとかがあるんじゃない?」
私が言うまでもなく、ユウリは本棚から本を次々に出していた。それを見たルカやジョナスも真似してどんどん本を落としていく。
うわあ……。そんなに乱暴に本を出しちゃって、エドが見たら怒られそうだなあ。
なんて暢気に考えていたら、ふとある言葉を思い出した。
――ああ、そうそう。もし塔に着いたら、私の名前を思い出してください。
そう言えば、ここに来る前にエドがそんなことを言っていた。
エド……。賢者に関する本……。名前……。
私の頭の中で、何かがカチッと嵌まる音がした。
「ちょっ、ちょっと待って!!」
思わず私は声を張り上げた。
「どうしたんだよ、アネキ。早く隠し部屋のスイッチを……」
「ここに来る前、エドが『私の名前を思い出してください』って言ってなかった?」
その一言に、ユウリの目が大きくなった。
「……そういえば、すっかり忘れてたな」
「もしかしたらこの本棚の中に、エドの名前が書いてある本があるかも!」
「なるほど! ミオ、すごい!」
私の推測に、ジョナスが感嘆の声を上げる。まだ確証はないので間違っているかもしれないんだけど。
「確かめてみる価値はあるな。エドという名前がないか探してみよう」
ユウリの言葉に、私たちは早速エドという名前が入った本を探すことにした。
そしてしばらくたった頃、再びルカが「ありました!!」と大声を上げたのを聞きつけ、すぐに一斉に彼のもとへ向かった。
その本は、『木こりのエドとおおがらす』という、子供向けの童話だった。よく見るとこの本だけ他のとジャンルが異なっている。
ユウリが前に出て、その本をゆっくりと抜いてみる。すると、本棚の奥に小さな鍵穴が空いていた。
「鍵が必要なの?」
私がその穴を覗き込むと、ユウリは今しがた本棚から抜いた本を開いた。
すると、折り目のついたページに、小さな鍵が挟まっているではないか。恐らくこの鍵を使って開けるのだろう。
ユウリは周りの本をどかし、手を本棚に突っ込んで鍵穴に鍵を差し込んだ。するとカチリと音がした瞬間、 隣の本棚が地響きを上げながらゆっくりと動き出した。
「うわあっっ!?」
「これ、精霊のご加護か!?」
見たことのない仕掛けに、ルカとジョナスは驚いていた。私はイシスで似たような仕掛け
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