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俺様勇者と武闘家日記
第2部
スー
アープの塔
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「ここ、アープの塔。魔物たくさんいる。気を付ける」
 精霊の棲む泉を出発してから三日目の今日。ようやく全ての山を越えた先に見えてきたのは、広い大草原にぽつんと建てられた塔だった。ジョナスに教えられるまでもなく、すぐにそれがアープの塔だと確信した私たちは、魔物のはびこる草原を切り開きつつ、真っ直ぐその場所に向かった。
 アープの塔は、昔人間だったエドが研究のために使っていた場所だと言う。けれどエドが馬になり、人が出入りすることがなくなってから、すっかり魔物の巣窟になってしまった。エドのことを慮ったスー族の人たちが定期的にこの塔に巣くう魔物を退治してはいるのだが、もともとこの地には魔物が多く棲息していることと、魔物を倒す程のレベルを持つスー族の人があまりいないことから、ほとんど焼け石に水の状態らしく、今でも魔物は数多く蔓延っている。
 ジョナスもここで魔物退治をするスー族の一人らしく、半年に一回はここを訪れているという。なので塔の作りや内部もよく知っている、これ以上ないくらいの案内人だ。
「最上階、エドの部屋、ある。そこにきっと、山びこの笛、あると思う」
 きっぱりとジョナスが言う。彼が言うのならきっと間違いないのだろう。ひとまず私たちは、上へと続く階段を探すことにした。



――そのはずだったのだが。
「どういうことだ……?」
 塔に入ってから二日目。私たちは、未だに山びこの笛を見つけられず、塔の中を行ったり来たりしていた。
 確かに階段はあり、一番上まで上ることは出来たのだが、肝心の山びこの笛はどこを探してもなかったのだ。
 しかも途中、塔に棲みつく魔物がひっきりなしに襲いかかり、そのフロアの魔物を一掃するのに思いの外かかってしまった。そのお陰で長い間蔓延っていた魔物は、あらかたいなくなったのだが。
 そもそも、山びこの笛が見つからなければこの塔からは出られない。すでに四人の疲労は、魔物との連戦と探し物が見つからないと言うジレンマにより、肉体的、精神的にもピークに達していた。
「塔の中は全て攻略したはずだ。なのになぜ、山びこの笛は見つからないんだ?」
 塔の最上階と思われる五階に着いたとたんすぐに一夜を過ごした私たちは、翌朝その広い室内で車座になり、今後の方針を考えることにした。
 エドがさまざまなマジックアイテムを開発するための研究所として使われていたこの塔は、主な作業部屋であるこの最上階を除いて、ほとんど何も置いていなかった。この下の階まで一通り見てみたが、階段と燭台が掲げてある廊下以外、目につくものは何もない。ちなみに私たちがいる最上階である五階には、研究に使った道具があちこちに散らばっており、壁には本棚がずらっと並んでいた。ただ本棚の配置は統一感がなく、全部壁際に配置すればいいものを、突然部屋の真ん中にどーんと本棚
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