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ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語
■■SAO編 主人公:マルバ■■
四人で紡ぐ物語◆レッドギルド
第二十六話 失ったこと、気づいたこと
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ち上がったマルバは周囲を一瞥して状況を確認した。
アイリア。現在二人を相手取って戦闘中だ。レベル3の毒を受けていて余裕は無いが、HPはまだ7割強残っている。
ミズキ。アイリアの補助をしながら一人と戦闘中。こちらは高い防御力が幸いしてかほぼ無傷である。
そして……シリカ。残りHPは二割強しかない。シリカが応戦中の敵もHPは残り一割程度。両者とも非常に危険な状況である。




……分かっていた。もちろん分かっていたのだ、シリカが危ないということは。シリカが窮地に陥っているのは麻痺毒で動けない間に見ていたではないか。それなのにすぐに助けずに周囲を確認し、『両者とも非常に危険な状況である』などと悠長に状況を整理しているのは、もちろんシリカを助けるということはマルバが殺人を犯すということに直結しているからなのだ。
このままシリカを助けるためにシリカが応戦中の男を攻撃すれば、その瞬間に男はHPを全損し死亡する。しかし、助けなければ命の破片を撒き散らして死ぬことになるのはシリカの方だ。男にナイフを突きつけて「さあ、投降しろ」などというやり取りをする暇はない。というのも、こんなことをマルバが考えているうちにもシリカのHPはどんどん減っているのだ。ほら、もうすぐ残り一割になる。忘れてはいけないのは、シリカは今も戦闘中だということだ。もしシリカが連続で攻撃を喰らったりすれば、そのHPは全損し、シリカは……

シリカは死んでしまう。


死んでしまう?……シリカが?シリカが死ぬ?僕はなんでシリカが死ぬかもしれないのに戸惑っているんだ?シリカが死ぬかもしれないのに?

マルバの中で、何かが音を立てて壊れた。半ば無意識的に動いた左手は文字通り必殺の『シングルシュート』を放ち、鍛えあげられた敏捷性パラメータはその速度を極限まで加速する。リズに相当強化してもらった短剣の《正確さ》とマルバ自身の持つ『クリティカル率上昇』のModの助けを借りて、マルバの手を離れた短剣は見事に敵の後頭部を突き抜けてシリカの背後の壁に突き刺さった。その姿が青く揺らぎ、直後にがしゃーんという音をたてて壊れる。しかしマルバは止まらない。右手でポーチから最後の一個の回復結晶を取り出すと、今にも消えそうなHPゲージの残り数ドットを睨みつけながらシリカに駆け寄り、早口で唱えた。
「《ヒール》、シリカ!!」


一瞬で回復したシリカのHPゲージを確認したマルバはまず安堵し、そしてすぐに人を殺してしまったことに対する強烈な後悔や罪悪感に襲われ……なかった。あるのはシリカを守れた安堵と、なんだろう……シリカを守りきれた自分に対する……誇り……?
自分が罪の意識に(さいな)まれないということに強烈な違和感を感じ動きを止めたマルバだが、ミズキの叫びがその意識を戦闘へと引き戻した。

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