第二十四章 みんなの未来を守れるならば
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、不快な。
赤毛の少女は、びくりと肩を震わせると、口を開いた。
開いたが、ひゅっと呼気だけで、上手く声が出なかったので、大きく首を縦に振った。
「それじゃ、こちらへきたまえ」
あぐら姿勢から立ち上がった白銀の魔法使いは、この長細い部屋の、奥へと歩き出した。
アサキには、止めることが出来なかった。
戦いに勝ったのは、こちらであるというのに。
儚げに身体を震わせながら、白銀の魔法使いでありリヒト所長である至垂徳柳の、大きな背中を見ていることしか、出来なかった。
ここに義父母がいるという話など、真実かどうかも分からないのに。
逃げるための方便。充分に考えられることなのに。
嘘かも、知れないのに。
本当であるのは、どうであれまたもや形勢逆転を喫してしまった、ということ。
だがそれは、アサキ個人にとっての理屈である。
「勝手に動くな!」
「嘘ばかりをいうな! ここは既に、大半をメンシュヴェルトが押さえているんだ。令堂和咲の両親を隠す場所なんかないぞ!」
広作班、リーダー仁礼寿春と、サブリーダー建笠武瑠の声だ。
彼女たちも人命のため動きはするが、今件の最優先事項はリヒト所長の確保。
まともに戦える唯一の存在であるはずの令堂和咲がこのような状態であるため、もうなりふり構ってはいられなくなったというところであろう。
だがしかし、リヒト所長は構うことなく歩き続ける。
従う義理がどこにある、とばかりにふんと鼻を鳴らして。
「動くなといってる!」
サブリーダーの建笠は、たんと床を蹴った。
右手の剣を振り上げながら、叫ぶ。
「お前は、令堂との戦いでもうボロボロだ!」
左手に装着された盾で己が身を守りつつ、軽く跳躍しながら、空中から右手の剣を躊躇なく叩き付けていた。
白銀の魔道着、その背中へと。
がちゃ、
金属がぶつかり合う音。
サブリーダー建笠が放つ至垂への一撃は、寸前で受け止められていた。
二人の間に入り込んだアサキが両手に持った、水平に寝かせた剣で。
アサキはそのまま、反動を付けず力に任せて剣を振るう。
魔法により強化されたそのパワーは強烈で、空中で踏ん張りの効かない建笠の身体は、大きく弾き飛ばされていた。
どう、
弾き飛ばされた建笠が壁に背を打ち付け、鈍い音が立った。
「ごめんなさい!」
アサキは、もどかしげな涙目で、済まなそうに頭を下げた。
「くそ……やりやがったな……」
痛みを堪えながら広作班サブリーダーの建笠は、自分の肩を回して無事であることを確認すると
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