第二十四章 みんなの未来を守れるならば
[4/34]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
アサキの身体が震えた。
ぴしゃり電撃を受けたように、ぶるり激しく。
目が、大きく見開かれていた。
「まさか、二人に……」
2
頬を引つらせたまま、赤毛の少女はがたがた震えている。
「ん? 二人って誰かなあ?」
深まったのか浅まったのか分からない微妙な感じに、至垂の笑みが変化した。
赤毛の少女の、心をより追い込むために。
より突き落とすために。
笑みの質がどうであれ、からかっていることに違いはない。
でも、その効果は赤毛の少女、アサキには覿面であった。
「ふ、二人っ、す、直美さんとっ、修一くんに、な、なにかっ、なにか、したんですか!」
狼狽していた。
外面からもひと目で分かる、思考の混乱。
混乱、焦り、不安。
そうなるのも当然だ。
至垂はアサキの家族に対しても触手を伸ばしている、ということが分かったのだから。
からかうために曖昧な言葉ばかり選んではいるが、はっきりいわれたも同然であり、家族として冷静でいられるばずがなかった。
「やだなあ、まるでわたしが酷いことをしたかのようじゃないか。……丁重に、ここへお招きしただけだよ」
ゆっくりと、はっきりと、囁き声に似た、至垂徳柳の言葉。
曖昧はいま、確実になった。
アサキの心臓は、一瞬にして冷たく凍り付いていた。
鼓動しているのが不思議なほどに。
「ど、どこ、二人は、どこにっ、いるんですかっ!」
身体が、ガタガタと震えている。
指が、ぷるぷると震えている。
顔が、すっかり青ざめている。
どうしたらいいのか、どう思えばいいのか、気持ちが、わけが分からなくなっている。
身体の中が、熱い、冷たい。
よじれそうだ。
ねじれて裂けそうだ。
狼狽して、半ば真っ白な意識の中、残った意識が、他人事のように胸の中に言葉を吐く。
やっぱり先ほどからの戯言は、このことをいっていたんだ。
わたしが自分の家族を思う気持ちを、やたら否定するような、からかいの言葉は。
でも、それは当たり前のことじゃないか。フミちゃんのことだって心配だったけど、修一くん、直美さんは、わたしの家族なんだ。
自分の家族を一番に思うことの、なにが悪い。
しかも、直美さんのお腹の中には……
無意識が勝手に紡ぎ出す、思考の言葉ではあるが、考えるほど息が苦しくなる。
家族を心配する気持ちと、親友への罪悪感で、胸が痛くなる。
唾を飲もうと喉を動かすが、水分を失って喉にべったりへばりついているようで、まともに飲み込めず、不快感はまったく楽にならなかった。
「会いたいかい?」
脳に飛び込む、甘い声。
ねっとりと
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ