第二十四章 みんなの未来を守れるならば
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く、押し殺せてなどいなかったが。
言葉を受けた赤毛の少女アサキは、僅かの躊躇もなく、きっぱりとした顔、凛とした表情で口を開いた。
「なんにも起こるはずがない」
と。
「……誰だって、生きていれば悲しいことはある。絶望だって、するかも知れません。でもわたしには、慰めてくれる、温かい言葉を掛けてくれる、引き上げてくれる、迎えてくれる、認めてくれる、一緒に泣いてくれる、時には殴ってくれる、掛け替えのない仲間がいる。それだけじゃない、こんなことになっちゃって、何人もの生命が失われて、その人たちのためにも、わたしたちは……」
ここでこんなことをいっても、仕方のないことなのに。
思わず、正直な気持ちが口をついて出てしまっていた。
だが、その言葉は途中で、不快な拍手に阻害される。
ねちねちねちと、手のひらの肉厚なところを激しく素早く叩く、なんとも嫌悪感を抱かせる至垂の拍手によって。
「いやあははっ、淀みなくぺらぺらと、小鳥のさえずりのような口上だ。……綺麗なことばかり。きみは、薄っぺらいなあ。それに、ちょっと自分に酔ってない?」
「人を鼻で笑ってばかりで、楽しいんですか? わたしから冷静さを奪うことが目的なんでしょうけど」
生憎様だ。誰がそんな、低レベルの挑発などに乗るものか。
そもそも、綺麗だとか汚いだとか、わたしにはどうでもいいことなんだ。
わたしはただ、自分を信じて、自分の価値観で行動しているだけなんだから。
「きみは、わたしをそういう小さい人物と見るんだなあ」
「小さいとも思いませんが、最低だとは思っています。心の奥底から」
正直な気持ちだ。
「へえ。じゃあその、挑発ついでに一つ聞くけど、さっきの、明木くんの妹さんの件、わたし、この至垂が迂闊であったため、楽々と取り戻せたんだ、って本当に思ってる?」
別働隊として潜入していた、天野姉妹が、警備網を潜り抜けて治奈の妹、史奈を救い出した、そのことだ。
あと少しで史奈は殺されていたわけで、タイミングとしては際どかった。だが、特に難航したわけではなかったと、天野姉妹たちはそう話している。
「じゃあ、あなたが後悔して、人間らしい気持ちを取り戻したから、とでもいうんですか」
もしそうなら、ここでこうなっているはずもないが。
「人間じゃないだろう。お互い」
くくっ、と笑い声が漏れる。
「わたしは、人間です。生まれ方なんて関係ない」
人間で、修一くんと直美さんの、娘だ。
あと何ヶ月かで、お姉ちゃんになる、ただの人間、中学生の女の子だ。
「さっきは、あんなに泣き喚いていたのに。ま
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