第八話
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した。
「兄ちゃん」
「大丈夫だ、安心しろ。そのまま振り返らずに走れ」
小十郎に促されていつきちゃんが走る。それをちらりと見て、小十郎は一瞬で男の顔を掴んで思いきり雷撃を放っていた。
雷を直撃で受けたようなものだから、男は瞬きの間すらなく真っ黒焦げになりその場に崩れていく。
こんな様子を見ていた他の偽者達は完全に震え上がっていて、小十郎を怯えた目で見ていた。
「妙な真似をするんじゃねぇぞ。……妙な真似をすりゃ、こうなると覚えておけ」
必死に頷く偽者達を見て、小十郎が軽く息を吐く。
人一人を黒焦げにするくらいの雷を突然放ったせいか、身体に負担が来ているのかもしれない。顔色が酷く悪い。
「こじゅ」
「化け物!!」
小十郎、と声をかけようとしたところで上がったその声に、若干驚いた顔をして小十郎が農民達を見ていた。
農民達はまるで鬼にでも遭遇したような恐怖に引き攣った顔をして、ただ小十郎に怯えている。
「お、おめぇやっぱり鬼だな!? わ、災いを呼ぶ悪い鬼だな!!」
「化け物! おら達の村から出て行け!!」
口々に農民達にこんなことを言われて、石の代わりに雪玉なんかを投げつけられている。
それを特に避ける様子も無く、ただただ悲しそうな顔をして見ている小十郎が居た堪れない。
他の連中が止めに入ろうとするけれど、小十郎がそれを許さない。
「ちょっと、アンタ達いい加減に」
「おめぇらの言うとおり、俺は鬼だ」
私が怒鳴る前に、小十郎がそんなことを言い出す。
農民達は雪玉をぶつけるのを止めて、完全に怯えた顔をして身を震わせている。
「が、俺にはおめぇらが考えるような天災を起こす力はねぇ。ただし、奥州の平和を乱そうとするのなら」
小十郎が空中に放つ雷を見て、怯えて変な悲鳴を上げる者まで現れた。
「……今回はこれで納めておけ。だが、二度はねぇ。次はどうなるか……分かってるな?」
必死に頷く村人達を見て、小十郎は雷を消している。
小さく溜息を吐いて、部下の一人に装具と刀を集めておくようにと指示をしている。
「政宗様、申し訳ございませぬ。このまま城へと戻りますゆえ」
「馬鹿野郎、敵を作るようなことをしやがって」
「……咎めは後ほど受けますので……失礼致します」
それだけ言って一人村を出て行った小十郎を、伊達の人間は皆揃って何とも言えない、という顔をして見送っている。
……全く、馬鹿な弟を慰めてやるのも私の役目かね。
「政宗様、後宜しくお願いします!」
政宗様に後始末を全部託して、私は村を出て小十郎の後を追った。
……しかし、久しぶりに鬼だの化け物だとの聞いたもんだわ
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