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冥王来訪
第二部 1978年
ソ連の長い手
ミンスクハイヴ攻略 その2
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ある泣き黒子(ぼくろ)の魅力的な美女
左の泣き黒子は、一説によると情が深く、母性本能が強いという
その様な所に、ハンニバル大尉は惚れたのであろう
妻子の有る男の心の隙間に入り込む、魔性(ましょう)の女という見方も出来るかもしれない
 そう考えながら、衛門へ進んだ

 衛門に近づくと、女の話声と衛兵のやり取りが聞こえる
マント型の外套を羽織り、そちらへ足早に進む
「何度言ったら分かってくれるのかしら、私は参謀総長に話を聞きに来ただけ」
カーキ色の雨衣を着た衛兵が、目の前の婦人兵に丁寧に説明して居る
「困ります、同志ベルンハルト……。正式な書類が無ければ、御通しすることは出来ません」
件の婦人兵は、軍帽の縁から雨が零れ、漆黒の髪を濡らしている
白磁の様な透き通った肌色の顔が動き、宝玉のような赤い瞳で、此方を見る
「ブレーメ嬢……、如何したのだね」
思わず、言葉が飛び出した
 その言葉を聞いた衛兵は、顔を動かさず返答した
「同志将軍、ご存じなのですか……」
幾ら雨衣を着ているからとはいっても、春先の冷たい雨……
風邪でも引いて返したら、どうした物か
彼は、一計を案じた
「彼女は、急用で招いた。別室に通しなさい」

 空いている一室に招くと、タオルを渡し、髪を拭かせた
ストーブを点け、ハイゼンベルク少尉が持ってきた熱い茶を進める
灰皿を引き寄せると、タバコに火を点けた
「君らしくないではないか……、同志ブレーメ」
彼女は怪訝(けげん)な表情を浮かべる
「失礼ですが、同志将軍。既にベルンハルトに()した身です」
 ドイツに在って、姓は一般的に夫の姓を名乗る慣習があった
1794年に施行されたプロイセン一般ラント法は、婚姻した男女が夫の姓を名乗ることが定められた
1900年のドイツ帝国・民法典に在ってもその慣習を引き継いだ
家族姓(ファミリーネーム)は、夫の姓を名乗る事が義務付けられた
西ドイツで1976年に合同姓を名乗る事が法律で許可されたが、依然として9割以上が、家族姓で夫の姓を選んだ
社会主義下の東ドイツでも、そのプロイセン王国以来の慣習は尊重された

「それは、大変失礼な事をした……、では本題とやらを聞こうではないか」
ゆっくりとソファーへ腰を下ろし、彼女と対坐する
ハイゼンベルク少尉が急須より熱い茶を入れる
「既に、地上にあるハイヴはミンスクを除いて攻略済みと(うかが)っております。
ミンスクハイヴ攻略の軍事的意義、政治的意義も理解している積りです。
この期に及んで、ソ連との友好関係を続ける必要があるのでしょうか」
紫煙を燻らせながら、応じた
「難しい問題だ……」
彼女は無言のまま、彼を見続けた
「君の父君の関係もあるから知っていよう。
国家保安省(シュタージ)のシ
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