第二部 1978年
ソ連の長い手
ミンスクハイヴ攻略 その2
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暮れようとしている夕日も拝む事すら出来なかったであろう
暫し感傷に浸っていると、車はポツダムに着いた
公用車から降りて、歩いていると声を掛けられた
振り向くとハイム少将であった
驚いた顔をして、此方の顔を伺う
「どうした、アルフレート」
盟友の滂沱の涙に、不安を感じた
「ふと、古の戦士たちを思い起こしていただけさ」
彼は懐中より、官給品のハンカチを取り出す
涙の溜まった目頭を、静かに押さえる
「貴様らしくないな……」
再び、ハンカチを懐中に入れる
「否定はしない……」
茶色い紙箱のタバコを差し出す
赤い線に白抜きの文字で『CASINO』と書かれた東ドイツ製の口付きタバコ
「気分転換に、一本吸うか」
タバコを抜き出し、吸い口を潰す
胸ポケットより紙マッチを取り出すと、火を点ける
目を瞑り、深く吸い込む
「作戦まで2か月を切ったのに、今更顔合わせとは……」
「呆れて、ものも言えんだろう」
ハイム少将は、紫煙を燻らせながら答える
「出征する兵士どころか、その父兄や妻迄心配しているほどだ」
彼は、男の横顔を見る
「急にどうしたのだ」
男は苦笑する
「ベルンハルトの妻が、参謀本部に来たのだ」
思わず絶句した
唖然とする彼を、尻目に続けた
「いや、驚いたよ……。
士官学校の制服の侭、参謀総長に直談判しようと来たのだからな」
右の親指と食指で、紫煙の立ち昇る煙草を唇より遠ざける
ゆっくりと吐き出しながら、深く呼吸をする
「詳しく聞かせてくれないか」
「良かろう」
そう言うと、男は数時間前の出来事を語り始めた
朝より雨の降りしきるポツダムの参謀本部に一人の士官候補生が尋ねた
婦人兵用の雨衣外套を着て、衛兵と言い合いになっている人物がいる
執務室で、今後の作戦計画を練っているときに従卒がそう連絡してきたのだ
気分転換を兼ねて、彼が確認に行くことに成った
「しかし、連絡も無しに乗り付けるとは、どの様な人物なのかね」
彼は、脇を歩く従卒に尋ねた
「ベルンハルトと名乗っています」
思わず目を見開く
「例の『戦術機マフィア』の……」
「年は、18,9の娘ですが……」
深い溜息をつく
奴の妹であろうか……
幾ら議長の秘蔵っ子とは言え、つくづく先が思いやられる男だ
弟妹の扱いすら、満足に出来ぬとは……
「私が会って、諭して来る。
それと、同志ハイゼンベルクを呼べ」
従卒の方を振り向く
「大急ぎで、熱い茶と菓子を持ってくるように伝えてな」
彼は、ハンニバル大尉の愛人との噂の有るマライ・ハイゼンベルク少尉を呼び寄せた
若い娘と話す際には、年の近い彼女を呼んでおいたほうが良かろう
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