第2部
スー
目指せ大山脈
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塔は、エドが馬になってからはすっかり魔物の巣窟になってしまい、ここ何年も人が訪れたことはないと言う。賢者としてエドがその塔に住んでいたときも、スー族の間ではよそ者がやってきて得体の知れないことをやっているという噂が立ち、お互い交流がなかった。だが、エドが馬になってスー族の里を訪れたとき、山の神様と勘違いした一人のスー族が彼を崇め奉った。以来誤解が解け、偉大な賢者と知っていながらもなお、彼を尊敬し里の一員として共存している。
なのでジョナスを始め、スー族の人たちは皆エドに協力的だ。というより、スー族は基本的に一度信頼した人にはとても親切で友好的なのがわかる。ユウリを強者と認めたジョナスはもちろん、アナックさんや他の人たちも、いつの間にか彼を歓迎している。
ちなみに昨日、里の入り口でジョナスが警戒していたのは、昔エジンベアによって侵略されたからだそうだ。なので見知らぬ旅人に突然戦いを挑むというのも、その話を聞いたら納得できた。
「この辺り、魔物多い。気を付ける」
周囲を警戒しながら、ジョナスが声をかける。するとしばらくして、彼が警告したとおり数匹の魔物が私たちの前に立ちはだかった。
だが、レベル三十を越えた勇者とスー族の戦士がいるこのパーティーの前では、魔物の攻撃など無力である。ほんの一瞬で、全ての魔物が斬り伏せられた。私が拳を振るう出番すらない。ルカに至っては、今何が起こったのかすら理解できない状況だ。
「さすが、ユウリ。私とアナック認めた、強い。里の者、こんなに早く魔物倒せない」
ユウリの動きを目に留めたジョナスが、感嘆の声を上げる。
ジョナスに誉められてまんざらでもない表情を見せるユウリは、ちらりと私の方を見て、
「お前もこいつに誉められるくらい素早く魔物を倒してみろ」
なんて意地悪なことを言い放った。毎度毎度よく私への軽口を欠かさないなと心底感心してしまう。
ほどなく、大山脈と呼ばれる山道に差し掛かった。ごつごつとした岩肌と急斜面が、私たちの歩みを鈍くさせる。
「大山脈、ここから入る。 道、狭くて危険。皆、気を付ける!」
ジョナスの言うとおり、ろくに整備されてない山道を歩くのは恐怖であった。高度が上がるにつれ道幅は狭くなり、足元の岩は今にも崩れそうだ。
おまけにそんな中、風が強くなってきた。ジョナスによると、この辺りではよく強風が吹くらしい。私たちは早速ジョナスの奥さんに借りた毛皮のフードを身に付けて寒さを凌いだ。それでも強風を完全に防げることはなく、辺りに生えている申し訳程度の草木が荒々しく揺れているのを見るたび、自分の体が吹っ飛ばされないかと不安になる。
「ルカ。飛ばされるかもしれないから、手を繋ごうよ」
そう私がルカに手を差し出したのだが、ルカは首を横に振った。
「どうしたの?」
一番体も
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