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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第62話 エル=ファシル星域会戦 その6
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ヤンに対するシェーンコップの忠誠心とも違う。俺が死ねと言えば喜んで死んでくれそうな雰囲気。士気が高いのは喜ばしいとかすっ飛ばして、悪酔いしそうなほどに気味が悪い。一種の興奮状態にあるというんだろうが、他の部隊からの孤立が一層増し、より狂信的な感じがする。

 これは各個で弾除け扱いされることを危惧し、哨戒隊としてあえて一纏めにして運用することを提言した俺の責任だろうか。エル=ファシルでの戦いはこの詐欺のような地上攻略戦の結果を問わず、帝国軍の反撃がない限り成功裏に終わる可能性は高い。では終わった後は? 彼らの『罪なき罪』は許されるのか。

 しかし取りあえずのところ今はそれを考える時ではない。彼らの元エル=ファシル防衛艦隊の知識と技量を使わねばならない時だ。謀略の一歩として同盟軍が巨大な茶番を演じていると感づかれることのないよう、極力低出力に絞った超光速通信が惑星エル=ファシルに届く範囲まで、帝国軍の通信器具を持っていく必要がある。帝国軍の哨戒網はザルだったが、見事に惑星に接近して哨戒任務を果たした嚮導巡航艦エル・セラトがその任に相応しいのは明らかだ。

 まず帝国軍との通信が成立するのが前提だが、そこからは二段階に分けて救出作戦を実施する。これには本格的に拿捕した帝国軍巡航艦を使う必要がある。

 救出第一陣は帝国語が堪能な白色ないし淡白色人種で乗員を選抜した巡航艦四隻。艦長はフィンク中佐をはじめとした第八七〇九哨戒隊のうちの白色人種四名が務める。まったくもってろくでもない話だが、帝国軍には有色人種の士官はほとんどいない。これでまず地上軍から貴族上層部および貴族階級の士官たちを分離する。

 第二陣は同じく帝国語に堪能な艦長クラスの選抜要員とユタン少佐を除く第八七〇九哨戒隊の面々(フィンク中佐ら四名も艦を乗り換えて同行)が、ホワイトスキンを被って戦艦四隻を含む三〇隻の帝国軍艦艇に乗り込む。これが四万名の帝国軍将兵を救出する部隊となる。それに加えて無人遠隔自動制御された帝国軍艦艇二七五隻が同行する。

 この無人艦隊の指揮も含めた、救出作戦の全体を指揮するのが、フェザーンで生まれ五歳まで育ち、法衣貴族の息子で帝国騎士でもある『ジークフリート=フォン=ボーデヴィヒ准将』こと俺である。よくある名前を組み合わせて作っただけで、何となく俗な名前ですねと言っても、司令部の人間は誰一人として反応しなかった。

 そして本来の所属元から離れて、俺に同行している数人の情報将校(勿論偽名だろうし、顔も変えているんだろうけど)の一人が少し年上の女性で、俺のヘアメイクから何から担当してくれたのだが、一通り出来上がった自分は全くの別人だった。

「街中で出会ったら何となく撃ち殺したくなるような顔に仕上げてみました」
 その女性士官の言う通り、スマー
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