新条アカネ
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どんどん進んでいき、やがて見滝原公園の門をくぐったところで、アカネの視界からは見えなくなった。
「ほら。あの公園だ。速く行こう」
霧崎の声に渋々了承して、アカネは見滝原公園に立ち入る。
見滝原の住民で、この場所を訪れたことがないのは自分だけではないだろうか。
そんなことを考えながら、アカネは見滝原公園、その象徴たる湖を眺めた。先月未明、謎の現象により湖が完全に干上がってしまった。そのミステリー性でネットが騒然になった記憶は新しいが、すでに湖も復旧していた。
その分、今日見滝原公園は多くの人々でごった返していた。家族連れ、カップル、友人同士。
誰も彼も、遠い世界の人物に見えてきた。
「あの……」
その時。
全く知らない声をかけられた。
それは、
桃色のツインテールの少女。年はおそらく、アカネよりも年下。中学生くらいだろう。
弱気な印象を抱かせる少女は、静かに会釈した。
「突然ごめんなさい。なんか、すごく落ち込んでいるみたいだったから」
「……」
アカネは何も答えられない。
だが、そんなアカネへ、霧崎が助け船を出した。
「ああ、気にしないで。大丈夫。ねえ?」
霧崎に顎を撫でられた。不快感を表情に表しながら、アカネは霧崎を睨んだ。
「あ、ならいいんです。よかったあ」と、お辞儀をした少女は、アカネから遠ざかっていった。
「おいおい、マスター。しっかりしてくれよ。このままだと、折角の最強の怪獣であるムーンキャンサーが野生化してしまうじゃないか」
霧崎はアカネの肩を叩いた。
彼の手を振り払い、アカネはムーンキャンサー……人々が騒がないということは、人目に付かない森の方にいるのだろうか……をさがして、茂の方へ足を向けた。
「ムーン……キャンサー? ムーンキャンサー?」
か細い声で、サーヴァントの名前を呼ぶアカネ。だが、聞こえる声量でもなければ、ましてやムーンキャンサーに届くはずもない。
そして周辺には、笑顔が眩しい人々の姿がある。笑顔に視界を遮られながら、アカネは進んでいく。
「おいおいマスター。ちゃんと真っすぐ歩かないと危ないよ」
「誰のせいでこうなってるって……うわっ!」
歩いていたら、足を取られた。
茂に足を取られ、横転したのだ。下半身を上に、上半身を下に。四肢を投げ出した状態のアカネは、せせら笑う霧崎を睨んだ。
「起こして」
「え?」
「いいから起こしてよ!」
「アーッハハハハハ!」
すると、霧崎は大爆笑。
周囲の大勢の人々に笑われながら、アカネは立ち直る。アカネは口をきっと結びながら、逃げるように茂から森に入っていく。
人がいない、森の中。入ってすぐ、アカネは緑と茶色とは別のもの
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