第三章
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「その経験も活かしてな」
「そうしてなのね」
「今度でかい仕事を任されているんだ」
「そのお仕事をなのね」
「わしのやり方でだ」
「成功させるの」
「そうする、ただどんな仕事かはな」
「仕事家庭に持ち込まないでね」
小雪はそれはときっぱりと告げた。
「いいわね」
「ああ、それは母さんにも言われてるしな」
「詳しい内容はね」
「言うか、だから仕事に関する書類やUSBもな」
「持って来ていないわね」
「家ではわしは会社員じゃない」
だからだというのだ。
「それでだ」
「お仕事は持ってきていないわね」
「そうしている、だから詳しいことはな」
仕事のそれはというのだ。
「言わないからな」
「そうなのね」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「後は上手くいったらな」
「その時になのね」
「その時は母さんも退院しているからな」
「お母さんにプレゼントね」
「母さんの好きなチョコレートケーキを買って来る」
そうしてくるというのだ。
「お前達にもな」
「兄さんと弟にもなのね」
「それぞれな、わしにも買うしな」
「自分へのご褒美ね」
「ああ、だから楽しみに待っていろ」
「そうしておくわね」
小雪は失敗した時のことはあえて聞かなかった、聞くと怒ると思ったしここで父のやる気に水を差したくはなかったからだ。
それで続報を待っているうちに。
母の君江が帰ってきた、五十近いが切れ長のはっきりとした目はやや垂れ目で色白であり顎の先が尖った赤い唇は艶やかで黒髪をロングにしている。一六二程の背でまだスタイルは崩れておらず胸はかなり大きい。
その妻が退院してきて少し経ってからだ。
ある日父は笑顔で帰って来た、そして家族にケーキを出して言った。
「いやあ、湯舟君のあの時の顔は」
「どうだったの?」
「憮然としてだよ」
娘に彼女の好きなチーズケーキを出しつつの言葉だった。
「よかったですね、だよ」
「お父さんのやり方でいったら」
「ああ、上手くいってな」
そうしてというのだ。
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