第二章
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「僕はまだまだだね」
「若いうちはないさ」
「僕早くツリーになりたいのに」
「ははは、そう思うなら待つことだ」
「お爺さんになることを」
「それまではずっとここにいればいい」
この森にというのです。
「そして鳥や栗鼠や鹿を見てな」
「楽しめばいいんだ」
「雨や雪もな」
自然もというのです。
「そうすればいいだ」
「そうしていいんだね」
「そうだ、ゆっくりと楽しんで」
森の中にいてというのです。
「そしてだ」
「最後になんだ」
「ツリーになればいいんだ」
「それは最後でいいんだね」
若いモミの木は年老いたモミの木の言葉に考える声で応えました。
「本当に」
「急ぐことはないんだ」
「早くなりたくてもだね」
「長く長く生きて」
そしてというのです。
「そして最後にだよ」
「ツリーになってだね」
「一生を終えればいいんだ」
「それまではここで楽しめばいいんだ」
「そうだ、ゆっくりとな」
年老いたモミの木の言葉は優しいものでした、そしてある年にでした。
年老いたモミの木はツリーに選ばれました、それで切られようとする時に若いモミの木にこう言いました。
「ではわしもな」
「これからだね」
「そうだ、ツリーになる」
そうなることを言うのでした。
「だからな」
「それでだね」
「これでお別れだ」
「さようなら、お爺さん」
「最後に飾ってもらってな」
ツリーになってというのです。
「そしてだ」
「薪になってだね」
「一生を終えてくる」
「うん、もう二度と会えないんだね」
若いモミの木はこのことに悲しいものを感じました。
「そうなんだね」
「そうだな、しかしな」
「しかし?」
「それがモミの木の一生なんだ」
「だからなんだ」
「もうこのことは仕方ない」
年老いたモミの木は優しく言いました。
「だからだ」
「このことはなんだ」
「当然として。そして」
「ツリーになってなんだ」
「最後の最後に楽しい思いをしてくるな」
「そうしてくるんだね」
「何もかも何時かは絶対に死ぬんだ」
年老いたモミの木はこうも言いました。
「それなら最後に飾ってもらうならな」
「それならなんだ」
「これ以上はない位幸せだな」
「そうだね、それじゃあね」
「今から行って来るな、そしてお前さんもな」
「お爺さんになったらだね」
「その時はな」
この時も優しい声でした。
「だからな」
「うん、その時までね」
「ここで楽しく過ごすんだぞ」
「わかったよ、お爺さんはずっとここにいて楽しかった?」
若いモミの木は今まさに切られようとする年老いたモミの木に尋ねました。純粋に尋ねる声でした。
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