第一章
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少年自衛官
江田島の海上自衛隊幹部候補生学校の教育はあまりにも厳しい。
訓練だけでなく座学という授業それに日常生活もだ。
掃除に整理整頓、ベッドの手入れに制服もである。
「いつもアイロンかけてるよな」
「そうだよな」
「制服に作業服にってな」
「陸戦服もだしな」
「俺達クリーニング屋になれそうだな」
「いつもアイロン持ってるからな」
部屋の中で候補生達がぼやいていた、見れば実際にだった。
彼等はアイロンを手にしている、そうでない者はベッドメイクをしている。それも必死の顔でせっせと行っている。
「時間がないってのにな」
「ちょっと駄目だと言われてなおしてこいだ」
「ベッドなんかひっくり返されるし」
「机の中の教科書もそうなるしな」
「ここ厳し過ぎるだろ」
「厳しいって聞いてたけれどな」
「凄いな」
その厳しさたるやというのだ。
「これが伝統なんだな」
「海軍兵学校からの」
「最初から滅茶苦茶厳しくてな」
「それが最後まで続くんだな」
「幹事付はいつも見てるな」
この学校での生活指導の教官であり二人いる、この学校では俗に赤鬼青鬼と言われ恐れられている。
「それで何かあったら言われる」
「お仕置きもあるしな」
「流石に兵学校みたいに殴られはしないが」
「厳しいことは変わりないからな」
「授業も訓練も大変だし」
「こんなところなんてな」
流石に思わなかったとだ。
彼等は言いながら日々を過ごしていた、これは一般大学出身の者達だけでなく防衛大学出身の者達も同じだった。
「噂には聞いてたけれどな」
「本当に厳しいな」
「陸や空より窮屈だな」
「何かと言われて時間もない」
「本当に厳しいな」
こうしたことを話していた、だが。
一般大学出身の者で一人だけ平気な者がいた、その日常生活で。
幹事付に一切言われない、彼等は何か些細なことで言うがその候補生には何も言わない。それは第一分隊の菊地修造という者で。
年齢は二十三歳、背は一七五程で引き締まった身体で面長の日に焼けた顔に眼鏡をかけている。黒髪を自衛官らしく短くしている。
菊地はいつも制服に手早くかつ的確にアイロンをかけていて。
ベッドメイクも整理整頓もまさに完璧だった、座学は普通程度であったが訓練は何をしても全く平気であった。
その彼を見てだ、他の候補生達は不思議がった。
「何で何でも出来るんだ?」
「幹事付に一切言われないんだ」
「週番しても平気だったしな」
「訓練でも倒れたりしないぞ」
「何で何をしても平気なんだ」
「こんな生活でもまだ余裕ある感じだな」
「こんなとんでもないところで」
特に一般大学出身の者達が不思議がった。
「こんな大変なところない
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